2021-09-29 明治27年の想いを現代に繋ぐ厚真町“伝平さんの畑”の開発力に迫る|HFT10

明治27年の想いを現代に繋ぐ厚真町“伝平さんの畑”の開発力に迫る|HFT10

現在、世界中から注目されている「北海道ブランド」。

広大で豊かな大地とパイオニアスピリッツから生み出される名産品の数々は、多くの人々を魅了して止みません。

雄大な自然が広がる北海道は正に食の宝庫です。

厳しい気候と向き合い、時には調和し、時には抗いながらも大切に育てられた野菜や果物や穀物。広大な大地で安全に育て作られた畜産や乳製品。栄養豊富な大洋から水揚げされる新鮮な魚介類。その他、様々な自然の恵みが私たちの生活を豊かに彩り、充足をもたらしてくれます。

そして、その恵まれた素材や原料を活かした魅力的な加工食品も多く製造されています。

ライズ北海道では、道内において優れた食への取り組みを行っている企業や団体、また個人も含めて「北海道食宝」としてご紹介しています。

北海道の食産業に携わる方々の情熱や想いを知り、それを感じて頂くことによって、一人一人が刺激を受けたり、インスパイアされる。それが北海道全体の昂りや興隆に繋がればという願いを込めて、生産者さんを取材し、情報発信を続けております。

さて、今回の取材でお邪魔したのは厚真町の名産“氷室熟成あつまいも”を原料として、新感覚のスイーツを開発、販売している「㈱伝平さんの畑」さんです。

明治27年、同社代表である下司さんの祖先「徳永伝平」さんが開拓者として厚真の地に入植し、その想いが120年以上もの時を超えて現代の下司さんへと繋がり、厚真町に新たな名物が誕生するに至ったという経緯、ストーリーについて伺ってきました。

この記事の中では、地域振興への想いや、こだわりの“商品開発”について迫っていきたいと思います。

お忙しい中、お時間を頂き、代表の下司さんにインタビューをして参りました。

様々な困難を乗り越えた末に完成した「夢のスクープ」開発秘話や地域への想いなど、教訓満載のインタビューをお楽しみください。

 

株式会社 伝平さんの畑 代表取締役 下司義之さん
株式会社 伝平さんの畑 プロジェクトマネージャー 菅原文子さん
取材=山本、吉本(撮影)

創業の経緯・歴史・企業理念について

〔インタビューイー|㈱伝平さんの畑 下司代表〕

ライズ北海道-山本)本日はお時間を頂き、ありがとうございます。それでは早速ですが色々とお話を伺いたいと思います。先ずは御社の創業の経緯、歴史などをお聞かせいただけますか?

下司代表)はい。創業の経緯ですが、この「㈱伝平さんの畑」は「氷室熟成あつまいも“夢のスクープ”」を開発・販売するためにつくった会社です。

山本)全ては「夢のスクープ」の為なのですね。

代表)そうです。その目的で2020年5月29日に設立しました。

山本)会社名の由来はどのような?

代表)明治27年に厚真町へ入植した「徳永伝平」。初めて豊沢地区に鍬を入れた開拓者の名前が由来になっています。

山本)下司さんとご関係のある方ですか?

代表)母方の先祖です。5代前ですね。熊本県人だったんです。

山本)厚真町では歴史的な方なのですね。

代表)徳永伝平さんは実在の人物ですが、会社名は特定の個人を指しているということでは無くて、開拓者の代名詞として沢山の「伝平さん」がいたということを示しています。その頃の開拓者のエネルギーというのは凄いものだったでしょうね。当時は本当に壮絶だったと思います。

山本)そうですよね。原野を一から切り開いて。ましてや熊本から来て北海道の冬の厳しさもあったでしょうし。自然との闘いですよね。豊沢地区はこちらから近いのですか?

代表)厚真市街と上厚真市街との中間位にあります。石碑があって「徳永」の名前が刻まれていますよ。

〔厚真町豊沢に建つ「開拓八十年記念碑」〕

山本)そうなんですか。やはり偉人ですね。では、このあと豊沢に行って伝平さんの想いを感じてきます!現地で鍬のひと振り目の場所も確認してきますね!

吉本)いやー、ひと振り目は無理でしょ!

一同)(笑)

山本)多くの時を超えて、徳永伝平さんの想いが現代の下司さんに繋がっているというロマン。感動的です!

事業のはじまりについて

〔交流プラザ徳永ベース外観〕

山本)元々は、じゃがいもをお弁当のお店向けに販売していらっしゃったんですよね。

代表)ええ。年間通してじゃがいもを供給して欲しいという話があって、氷室での貯蔵を始めました。厚真町産氷室メークインを東京のお弁当屋さんに納品したことから始まって、その事業は現在も続いています。元々、法人化する前も同じ「伝平さんの畑」という名称で事業をやっていて、パンフレットも作っていたので、それを共通で使えるようにということで会社名を同じものにしました。

山本)企業理念をお伺いしたいのですが。

代表)当社は「町民企業」を目指しています。町の財団を使わせて貰ってますから。メークインも氷室もそうですし、地域おこし協力隊として菅原プロジェクトマネージャーに来て貰っていることもあります。将来的にもう少し軌道に乗ったら、沢山の方に声を掛けて参加してもらおうと思っています。

山本)それは素晴らしい理念ですね。町民総出で取り組むということですね。

代表)そうですね。「あつまいも」という名称は「厚真」と「いも」ですから、独占できる標章では無いので、町民の財産として皆でつくり上げたいなと思っています。

山本)下司さんは元々商工会にお勤めだったそうで。

代表)そうです。大学を卒業して戻って来て、厚真町の商工会に勤めていました。

山本)商工会でも地域振興で活躍されていたのですね。

代表)活躍してたのかどうかは何とも言えないですが(笑)。地域の活性化などに取り組んでいました。

山本)商工会時代も厚真町のメークインを広める活動をされていたのですか?

代表)そうですね。やっぱり地域の特産品は活動のテーマに挙がりますよね。一つは“ハスカップ”で、もう一つが“氷室メークイン”ですね。

〔厚真町内の雄大なじゃがいも畑〕

山本)代表ご自身も元々畑をお持ちですよね?

代表)畑はありますが、農作物の生産はしていません。会社名に「畑」と付いてはいますが、会社で畑を持ってるわけではないんです(笑)

山本)そうでしたか。完全に私の早とちりでした(笑)。 では原料のメークインはどちらから仕入れているのですか?

代表)農協経由で仕入れています。東京のお弁当屋さんに納品するためには、ある程度サイズが決まってないと駄目なんですよね。一軒の農家さんと取引してもバラつきが出てしまうので難しくて。年によって冷害の影響だとか作柄も変わってきますし、やっぱり農協と取引した方が安定的に供給して貰えますからね。

山本)お弁当屋さんからは、どのように声が掛かったのですか?

代表)商工会時代、たまたま東京からお弁当屋さんの社長が来た時に食材について話をしました。お弁当用の食材なのでハスカップはなかなか使わないですよね。それでも梅干しみたいな感じで使ってはくれたんですけど、やっぱり“いも”の方に興味を持ってくれたようで。その時が6月で氷室メークインの時期だったので試食して貰いました。この厚真町のロケーションでメークインを食べると絶対においしいんですよ。それで感動したということで是非使いたいという話になりました。

山本)魅力が伝わったのですね。

〔氷室熟成あつまいも〕

代表)ええ。でも、その時はいいですよと軽く返事をしたものの、なかなか簡単なものではなくて。

山本)トントン拍子ではなかったと?

代表)農協側に「お弁当屋さんが週に20kg使いたい」と言っている旨を説明しましたが、量が少なく店舗扱いになってしまうということで価格が合いませんでした。また、東京ではメークインを食べないし、販売もされていないという理由もありましたね。東京でじゃがいもと言えば基本的に男爵なんですよ。関西ではメークインを食べるので“あつまいも”も出荷しているんですけどね。

山本)では、お弁当屋さん向けはどのような形に?

代表)結局、最初は手探りでしたが、妻の名義で週に20kgほど送ることにしました。それがこの取り組みの始めで、1996年か1997年くらいのことでしたね。

山本)いよいよ運命が動き出した感じですね。

代表)それが簡単ではなくて。年間通して使いたいというオーダーだったので、氷室のメークインもあるし、いけるだろうと思ったんですけどね。

山本)通年というところがハードルだったのですね。

氷室貯蔵について

〔氷室で熟成中のあつまいも〕

代表)農協では対応できないということだったので、農家さんが個人で自家用を貯蔵するために持っている氷室、町内に二軒あったんですが、そこを借りることにしました。農家さんでは氷を入れる作業が大変なので殆ど使っていなかったんですよ。後でわかることなんですが、確かに氷を入れる作業は凄い労力なんです。

吉本)本当に大変そうな作業ですよね。御社のホームページで動画を拝見しました。

山本)「アナと雪の女王」の冒頭のシーンを思い出しました。ハァン、ナァ、ナァ、ヘイナァ~ナァ~♪という感じで、見てて力が入りました。

一同)(笑)

代表)当時の農協の氷室は青年部が氷切りをやって中に詰めていましたね。ウチではそんな大変なことはできないと思って、その辺の雪や氷をチョロチョロっと入れていたのですが、それがアッと言う間に溶けてしまって。でも当初の“いも”の貯蔵量は1トン程度だったので、それでもなんとなく繋がっていたんですけどね。ただ、貯蔵期間の後半になると品質も落ちてしまって良くなかったんですけど。

山本)氷室貯蔵での品質管理は難しいのですね。

代表)当時、農協では氷室のメークインをやりかけては萎んでの繰り返しでした。その時は5トンくらい入る規模の氷室でしたが、実際に使われていたのが共同購入向けの1.5トン分だけ。3.5トン分は空いていたので、貸して欲しいと相談したんですが、最初は良い回答は貰えませんでした。

山本)厳しいですね。

代表)そうですね。ただ、出荷量も僅かでしたから何とか対応していました。その後は農協の氷室の余っているスペースも借りられるようになったんです。当時はそれで十分に間に合う量しか出荷していませんでしたしね。それでも何とか頑張っていたら、氷室メークインの人気が出てきたんです。ところが今度は農協の方で貯蔵量を増やすという方針になり、空きスペースが無くなって“氷室難民”になりました(笑)

山本)何とか回してきたのに。

代表)そうなんですよ。でも、その後は季節毎に農協のスペースが空いたらそこに入れさせてもらったりと、やりくりをしながら繋げていました。

山本)大変なご苦労ですね。

〔氷の切り出し作業風景〕

代表)そんなこんなでやっている時でした。商工会を退職した翌年ですね。2008年の6月初旬に家の前で氷室メークインの箱詰めをしていた時、男の人に「何をやっているの?」と声を掛けられました。疑問に思うのも当然ですよね。6月に“いも”の箱詰めをしている風景は変ですから(笑)

山本)確かに違和感ですよね。収穫時期でもないのに。

代表)ですよね。実はその声を掛けてきた人というのが今の宮坂町長でした。町長選で1回目の出馬の時です。するとその後、選挙のマニフェストに氷室の振興が入っていました(笑)

山本)公約になっていたのですね(笑)。それにしても運命的な出会いですね!

代表)そうですね。一期目の公約の中で、おそらく一番時間が掛かった事業ですね。10年くらい掛かったでしょうか。それで2017年に大きな氷室が完成しました。270トン入る容積です。

山本)270トンですか!どのくらいのスペースなんでしょうか?ちょっとイメージが湧かないですね。

代表)相当大きなものです。

吉本)そんな広いところに氷を入れていくのは大変ですね。

〔氷室貯蔵用に切り出された氷〕

代表)流石にそこまで大きなものだと人力で切り出した氷を入れていくというのは大変です。なので、容器に入れた水を凍らせて、それを中に積み上げるという方式になっています。元々あった農協の5トンの氷室でも60~80kgの氷を500本くらい入れるので、同じことをやったら大変ですからね(笑)

山本)僕なら逃げだしてしまいそうです(笑)。でも大きな氷室が完成した後は順調だったでしょうね。

代表)その時点では、ウチの取り扱い量もそこそこ増えていて、氷室メークインだけでも20トンくらいだったかな?当時、農協ではまだ5~6トンくらいしか販売していなかったんですよ。そこで270トンの容量が出来たからといって、いきなり沢山熟成させても販売先もないですしね。どうしたものかと。

山本)それは直ぐには難しいですよね。

代表)「新じゃが」はあるけど、「古じゃが」ってないですよね(笑)。結局、氷室の“いも”って値段が付かなかったんですよ。

山本)確かにそうですね。市場が無いということですものね。

代表)ええ。今は270トン入る氷室の中にウチのが35トンくらい、農協も35トンという感じで、両方合わせても70トンしか入っていないんですよ。まだ200トンものスペースがあるので、そこを使わないといけないんですが、農協としては増やす方針は無いようです。やっぱり貯蔵すると腐ってしまうというリスクもありますしね。

山本)貯蔵したものの全てが出荷できるという訳では無いのですね。

〔下司代表-作業場前での一枚〕

代表)一部はどうしても腐ってしまいます。長期間貯蔵に耐えられるものばかりじゃないんですよ。ただ、厚真の“いも”は畑でしっかりと育てているから腐り難いんです。やっぱり目方取引なので多くの生産者さんは早く大きくしようとしますよね。するとそういう肥料も入れたりしますから。

山本)無理して大きくしているということですか?

代表)収量が大事ですからね。ただ、早く大きくすると腐りも早いんですよ。だから氷室から出ているものは、貯蔵に耐えられるしっかりとした“いも”ということです。

山本)厚真町産のじゃがいもは良質なのですね。

代表)そうですね。硬いし、そのぶん調理時間も少し長くはなるんですけど。普通のものの1.5倍くらいは掛かりますね。

山本)実がぎゅっと締まっている感じですね。

代表)ただ、中にはやっぱり弱いものもあって腐れてくるんですよ。“いも”は一個腐れると道連れをつくるから注意が必要です。

山本)少し“いも”の気持ちが分かるような気がしました。

一同)(笑)

代表)人間も同じですよね。一人で腐ってくれるといいんですけどね(笑)

胆振東部地震の影響とブランド化について

〔今なお残る胆振東部地震の爪痕〕

山本)震災の影響はありましたか?

代表)270トンの氷室は2017年2月に完成しました。ただ完成当初はそれほど多くは貯蔵されませんでした。そして2018年から本格的にやるぞと言っていたら地震が起きたんですよ。

山本)2018年9月6日。収穫時期でしたよね。

代表)収穫の始め頃ですね。収穫した熟成用のメークインをどんどん倉庫に入れて、さあ熟成させるぞと言った矢先に地震が起きて、氷室の壁に穴が開きました。酷いタイミングでしたね。500kg入りのカゴに入れて6段から7段くらいに積み上げるんですけど、それが崩れてしまいました。その崩れた“いも”は、もうどうしようも無いから、そのまま羊蹄方面などに持って行って選果場も借りて選別したんですよ。機械が壊れてしまったものですから。直すのに1ヵ月半は掛かりましたね。

山本)それは大変でしたね。

〔あつまいもの収穫作業〕

代表)結局、出荷時期がずれ込むことによって値段も落ちてしまいました。通常、厚真産は早めに出しているんですが、遅れたことで十勝産の時期と被ってしまったんです。圧倒的な量の十勝産が出てくる時期は値段が下がるんですよ。なので、厚真産はその前に出荷しなければ駄目なんです。

山本)計算が狂ってしまったのですね。

代表)それで、行き場の無くなったものを引き取って欲しいと言われました。サイズの小さいものも引き取って欲しいと言われたんです。頼まれたら応えたいと思いましたね。実はそれまでは販売を遠慮をしていたところもあるんですよ。農協と被らないように。でも、当時はそんなことも言っていられない状況でしたからね。でも売ろうと思ってもなかなか売れない。そこからですよね。やはりブランド力が必要だということで2019年に厚真産メークインを「あつまいも」としてブランド化しました。その中の種類として“新鮮いも”と“熟成いも”という風に分けました。

山本)素晴らしいと思います。ブランド化は重要ですよね。

〔氷室熟成あつまいも夢のスクープとあつまいものPRイメージ〕

代表)ただ、以前から思っていたことなんですが、一次産品をブランド化して売っていくためには、加工品がセットになっていないと知名度が伸びていかないという課題がありました。そして震災を経験したことで、今ここでやろうと思い立って加工品開発を始めた感じですね。

山本)その時に決意されたのですね。地域のために地元でという想いで。

代表)そうですね。厚真町で有名な加工品と言えば「あづまジンギスカン」、そしてハスカップの加工品としてゼリーやジャムがありますよね。でもジンギスカンだと常温でお土産として持っては歩けないですし、ゼリーやジャムも貰う人によっては反応が分かれるんですよ。

山本)確かにゼリーやジャムは“人を選ぶ”お土産という印象があります。それで辿り着いたのが“あつまいものカップケーキ”という形ですね。

代表)そうですね。厚真町の人がお土産で持って行ける名物、そういうものを作りたいと思いました。今、厚真町にはお菓子屋さんが無いんですよ。昔はあったんですけどね。だからお菓子を作ろうと思いました。もし今でも町内にお菓子屋さんがあれば「夢のスクープ」は作っていなかったかも知れません。

山本)やはり、お土産と言えばお菓子が最初にきますよね。

代表)でも、実のところ「あつまいも」はそのまま食べて欲しいというのが本心なんですよ。そのまま食べるのが一番美味しいんで。そこがテーマですよね。じゃがいも本来の味のイメージを崩さないようにするために知恵を絞りました。結果的に「夢のスクープ」に落ち着いたという感じですね。併せて、手軽に持っていけて、日持ちもして万人に求められるようなものという形ですね。

山本)思った通りの製品ができたのですね。

〔氷室熟成あつまいも夢のスクープ〕

代表)最初の試作品はイメージとはかけ離れたものだったんですが、完成形としては“熟成いも”の味そのものに結構近いところまできたのかなと思っています。それでも本物と食べ比べたらやっぱり本物が美味しいかな?

山本)しっとり滑らかで、氷室熟成されたメークインの甘さも抜群です。子供も喜びますよね。

代表)ありがとうございます。実は試作品の段階で孫にも食べさせたんですが、凄い勢いで食べたんですよ。それを見て「これはいけるな」と思いました。

山本)お孫さんの舌に叶ったのですね。

代表)そうみたいですね。あと、小麦粉を使っていないので、小麦アレルギーの子でも食べられます。

山本)それは素晴らしいことです。そこはもっと大々的に宣伝しては如何ですか?

代表)大きく謳っていないですけどね。実はあまり意識していなかったんですが、ある時「夢のスクープ」には小麦が入っていますか?と聞かれて、調べてみたら使っていなくて。それならアレルギーの人にも食べて貰えるから良かったなと。

山本)正に万人向けのお土産ですね。

夢のスクープの食べ方について

〔菅原プロジェクトマネージャー-作業場前での一枚〕

代表)あと、食べ方もね。カップが耐熱になっているので、そのままオーブンで焼いて食べても美味しいんですよ。

菅原PM)トースターだとカップが変形してしまいますが、オーブンレンジでは加熱しても大丈夫です。

吉本)また違う味わいが楽しめるということですね。

菅原PM)そうです。焼きたての感じが楽しめるんですよ。美味しいですよ。

〔氷室熟成あつまいも夢のスクープ〕

代表)一方、冷やして食べてもまた美味しいんですよ。冷凍でも冷蔵でもそのまま食べられます。凍らせて食べて少し溶けると冷蔵の状態も味わえます。食感が少ししっとりとしてきますね。食べているうちにどんどん食感が変わって面白いんです。

菅原PM)今年の夏は暑かったので、皆さんに喜ばれました。凍ったのを食べると美味しいって。昨日、あるところでは「夢のスクープ」を使ってパフェを作ったと言っていました。アイスクリームの中に詰めてフルーツを乗せて食べたそうです。

吉本)色々な形で楽しめるんですね。

菅原PM)冬になったら温めて、横にバニラなんかを添えて食べるとお洒落ですよね。

代表)味が濃厚なので色々なものに合わせやすいかも知れません。

こだわりの商品開発について

〔夢のスクープ発売時の記事-苫小牧民放〕

山本)商品開発への想いやこだわりを伺いたいのですが。

代表)じゃがいもをそのまま食べたようなものをつくりたいということですね。

山本)それがシンプルでいて一番難しいことですよね。

代表)そうですね。砂糖でもバターでも何でも入れちゃうと元々の味の良さってどこにあるんだろうと思ってしまいますよね。だから素材そのものの味を如何にして出すかというところにこだわっています。

山本)「夢のスクープ」は見事にそのこだわりが表現された商品だと思います。

代表)ええ。出せていると思いますね。これなら“いも”そのものの味に負けていないかなと。でも、熟成したあつまいもと比べたらやっぱり本物の方が美味しいでしょうね。添加物の味がしないから。

山本)正直、どちらも美味しいです(笑)。「夢のスクープ」の製造は「わかさや本舗」さんですよね。開発段階から色々と意見を出し合いながらこの味に辿り着いたということですね。

代表)そうですね。実は元々「わかさや本舗」さんでは、これの“インカのめざめ”版があるんですよ。スイートポテトですね。そのノウハウがあるので結構簡単にいくだろうと思ってたんですが、そうは問屋が卸してくれなかったですね(笑)

山本)ノウハウが通用しなかったのですか?

〔じゃがいも畑とコンバイン〕

代表)“いも”の違いですかね。それと目指しているものの違いもありました。試作をしてもらったけど“あつまいも”の良さが出ていなかったので作り直してもらいました。その次はイメージと違ったので、また作り直してもらってと。原材料を見たら“あんこ”に豆が入っていたので豆を抜いてくださいとお願いしたら、成型した際に高さが出ないという問題もありました。てっきり増量剤として豆を入れているものだと思っていたんですが、タンパク質を入れないと骨組みが無くなるから、形を保つために入れてるんだよと言われました。それで、また豆を入れて作り直してもらいました。開発段階からエルアイズの山本さん(※)にも入ってもらったんですが、山本さんがなかなかOKを出してくれなくて(笑)。山本さんが納得しないと完成にならないんですよ(笑)

(※マーケティング支援・商品企画 ㈱エルアイズ 代表取締役 山本亜紀子さん)

山本)一切の妥協を許さない方なのですね。

〔氷室熟成あつまいも夢のスクープ〕

代表)北海道おみやげ研究所(※)にも入ってもらっているので中途半端なものは出したくないという想いがあったようで。今の物でも納得してないんだって言ってましたけど(笑)

(※山ト小笠原商店とエルアイズが設立した北海道土産を開発するプロジェクト)

山本)こだわりが凄いですね。でも、なかなかOKが出ないという状況にあっても、わかやさ本舗さんは懸命に考えてくれたのですね。

代表)そうですね。途中、カップケーキ自体がどうだろう?という話になった際も色々な試作品を出してくれました。またちょっと別の形で“どら焼き”や“マカロン”、パイ生地を使ったものとかですね。ハスカップを入れたものもありました。これは耐熱ジャムが無くてベターっとしてしまって駄目だったんですが。色々食べてみて全部おいしかったんですけどね。

山本)最終的には“氷室熟成あつまいも”の美味しさがシンプルに伝わるカップケーキという形に辿り着いたんですね。

代表)そうですね。他にはタルトにしようという話もありましたし、色々とアイデアは出たんですが、一番“いも”の味が分かるということで決めました。

加工について

〔氷室熟成あつまいも夢のスクープ〕

吉本)「夢のスクープ」は、加工も含めて町内でつくっているのですか?

代表)OEM商品なので製造は「わかさや本舗」さんにお願いしています。

吉本)では、原料のじゃがいもを「わかさや本舗」さんに供給するという形ですね。

代表)それが“いも”を持って行けばパッケージ化されて、直ぐにできるものと思っていたんですが・・・。

吉本)違うのですか?

代表)それが大きな間違いで、わかさや本舗さんのオーダーは“あんこ”で納品なんですよね(笑)

山本・吉本)えーーー?!

代表)“あんこ”なんてつくったことがないので(笑)。それで“あんこ”をつくってくれる会社を探しました。ようやく見つかったのでお願いをしたんですが、そうすると今度は皮を剥いてある“カットいも”で納品して欲しいと言われて(笑)

山本)それは大変ですね。段階を踏まないと駄目なんですね。

代表)ええ。じゃあ皮を剥いて納めましょうとなったんですが、皮を剥いてカットしたものは2日しか鮮度が持たないんですよ。厚真町内に業者さんもいないし、1日か2日後には工場で製造まで持って行くとなるとタイミングも難しいですよね。尚且つ、氷室熟成メークインの旬は5月から7月くらいまでの正味3ヵ月しかないので、その間にしか“あんこ”がつくれないということになってしまうんです。困ったなと思って相談した結果、冷凍でもいいですよという話になりました。でも、メークインは冷凍ができないので、最終的には皮を剥いてカットして加熱してから冷凍するということになりました。

山本)なるほど!加熱することによって冷凍が可能になるのですね。

代表)そうなんですよ。それを「冷凍カットいも」といいます。今度はその加工をしてくれる業者さんを探しました。札幌振興産業財団さんとか食品加工研究センターさんとかに相談したんですが、結果、一番近いところで100㎞もありました(笑)

〔収穫間近のじゃがいもの葉-厚真町内の畑〕

山本)でっかいどう北海道ですね(笑)。ちなみにどこの業者さんだったのでしょうか?

代表)浦臼町です。他は真狩村と帯広市でした。結果的に真狩村のパイオニアジャパンさんの関連工場にお願いしています。それまで外注加工はやっていなかったそうですが、特別に受けてくれることになりました。結局、メーカーさんの前段階で2つの会社を通しているという形ですね。

山本)下司さんの想いが伝わったから受けてくれたのでしょうね。それにしても相当な苦難を乗り越えた末に完成されたのですね。もう信念ですよね。私ならとっくに諦めてしまったかも知れません(笑)

代表)大変でした(笑)。やっぱり万が一を考えると専門の企業さんを通した方が安心ですからね。だた、もう一つ問題がありました。わかさや本舗さんへ“あんこ”を納める際には賞味期限を考える必要もあったんですよ。“あんこ”の賞味期限が半年間なんですけど、1ロットの重量が400kgもあるんです。想像の範囲を超えてましたね(笑)。どのくらいの期間で使いきれるのかも分かりませんでした。

山本)400kgのあんこですか!?小錦よりも重いですね(笑)。イメージができません。

代表)最初は夢のスクープがどのくらい売れるのかも読めなかったので悩みました。“あんこ”も冷凍すると賞味期限を延ばせるという話を聞いたんですが、400kgが入る冷凍庫なんて簡単には・・・(笑)。困ったなと思って懸命に探しました。そうすると苫小牧埠頭にクールロジスティックがあったんですよ。ノムラ産業さん(野村商店のグループ会社)のすぐそばですよね。ここからも近いので、そちらに相談したら幾らでも入るよと言われました(笑)

山本)近くにあったんですね。それは良かった。

〔商品を説明してくれる下司代表-交流プラザ徳永ベース前にて〕

代表)それで、“カットいも”と“あんこ”を入れてもらうことになりました。ラッキー!と思いましたね(笑)

山本)下司さん、持ってらっしゃいますね!

代表)本当に色々な方々に助けられてますね。始まって直ぐに田中製餡さんの“あんこ”担当の方が東京転勤になったんですよね。でも、転勤後も引き続き担当しますと言ってくれました。丁度コロナ禍でリモートの時代にもなったので。

山本)そうですよね。リモート会議だと画面上で資料も共有できますしね。

代表)そうそう。千歳にいようが東京にいようがね。メールと電話だけでやりとりするのも当たり前の時代ですし。わかさや本舗さんの担当の方も、今は独立した方なんですが、退職が決まっていたそうなんです。でも、この製品が軌道に乗るまでは退職を伸ばすと言ってくれました。

山本)下司さんの想いが伝わったのですね。素晴らしい巡り合わせですね。感動しました。

代表)多くの方々にお世話になって商品化へと漕ぎつけられました。本当に感謝です。

売れ行きについて

〔厚真町のハマナスクラブでも販売中-1個売りは入荷待ち状態〕

山本)商品が完成した時期は?

代表)商品自体は前年の末頃にはできていました。販売開始が今年の4月10日ですね。

山本)出だしの反応は如何でしたか?

代表)北海道お土産研究所のエルアイズさんと小笠原商店さんの力もありましたし、テレビやラジオでも取り上げてもらったおかげで4月初旬は想定していたよりも売れました。最初のロットは500袋くらいで様子を見た方がいいと言われたんですが、足りなくなる予感がして1,500袋つくったんですね。それでも、あっという間に無くなって、町内では1日か2日で完売でした。その後は2週間くらい欠品状態になってしまって、だいぶ迷惑を掛けました。

山本)厚真町の人たちも嬉しかったのでしょうね。町名産のお土産ができたんだぞって。

代表)そう思ってくれたのなら嬉しいですよね。

商品のネーミングについて

〔氷室熟成あつまいも夢のスクープ〕

山本)「夢のスクープ」のネーミングの由来は?

代表)ネーミング出しを数多くやって、その中から選びました。“スクープ”というのは“スプーンですくう”という意味です。もちろんスプーンですくって食べるということもありますが、胆振東部地震を経験して、スプーンですくえるほどの幸せでも大切にしたいという想いがありました。それに“夢”を乗せて「夢のスクープ」という商品名になりました。

山本)“スクープ”ってなんだろうな?って気になりますよね。そして意味を聞くと奥行を感じます。物語や想いが見えるというか。

代表)そうだと嬉しいですね。

ノーステック財団の支援について

〔夢のスクープのパッケージ-正面に穴が開いた特徴的なデザイン〕

山本)ノーステック財団の支援を受けたのはどういった経緯で?

代表)産学連携の勉強会があって、その時にエルアイズの山本さんを紹介されました。山本さんと話していた際にノーステック財団の補助金を申請してみませんかという話があったんです。それで申請してみたところ、開発支援の形で採択されました。

山本)どういったところで活用されたのですか?

代表)デザインやPRの面で活用させてもらいました。デザインが主ですね。

山本)良いパッケージデザインですよね。キャッチーで印象的で差別化もできていますしね。

代表)パッケージに穴が開いているのはエルアイズの山本さんのこだわりなんですよ(笑)。小笠原商店さんからは「お客さんが指を入れる」と言われましたが(笑)

山本)インパクトありますよね!

代表)試作段階の費用として利用できるということで活用させてもらいました。ノーステック財団さんには試食会などにも参加させてもらっていて、PRの面でも支援をいただいています。

新型コロナの影響について

〔交流プラザ徳永ベース内の商品展示〕

山本)新型コロナの影響は?

代表)正直に言って分かりません(笑)。スタートから新型コロナ禍の真っ最中だったので(笑)

山本)そうなんですか?(笑)。確かに販売開始が今年の4月ですからね。

菅原PM)ただ、6月だけは製造ができませんでした。観光業が厳しかったことで問屋さんの動きが無かったんです。それが一番大きな影響でした。

代表)商品の出口が閉鎖してしまったんです。道の駅がクローズして、町内でも7カ所で販売していますが、その内の2カ所がクローズしてしまいました。空港も駄目でしたね。でも現在では順調に流れています。

今後の開発について

〔氷室倉庫で熟成中のあつまいも〕

山本)現在、開発中の商品や今後の開発予定は?

代表)あります。最初に甘いものをつくったので、次は“しょっぱい”ものをと考えています。具体的に言うと“ポテトチップス”のようなもので、幾つか試作品もつくっています。

山本)原料は「氷室熟成あつまいも」ですか?

代表)もちろんです。でも、まだ着地点は見えていない状態ですけどね。

山本)楽しみですね。期待しています。

北海道の食の未来について

〔首を垂れる稲穂-厚真町内の風景〕

山本)最後に北海道の食の未来について、下司さんはどのようにお考えですか?

代表)北海道が主導して、食の産地としてもっと真剣に取り組んだ方がいいと思います。まだまだ沢山やることがあると思うので。特に加工に関してですね。今回やってみた実体験として改めて北海道は加工が弱いということが分かりました。苫小牧は流通の窓口なので、この地域に加工集積が欲しいですよね。

山本)加工全体としてのレベルアップが必要ということですね。

代表)そうです。もう少し高い次元の加工が育たないといけないかなという想いがあります。農産物の生産はもちろん大事だけど、それに付加価値をつける技術に関してはまだまだ弱いという気がするし、あと食べ方に関してもね。出口は食べ方なので、そこに力を入れないと観光が伸びていかないですね。やっぱり北海道は食と観光。この2つをもっと極めた方がいいと思います。

山本)一次産品が優れているので、それに甘えてしまっているのかも知れませんね。そのままでも売れますから。

代表)人がおおらかですよね(笑)。良い意味でも悪い意味でも(笑)

〔農作業の風景-厚真町内〕

菅原PM)農家さんと加工側が一体になっていないので何かをつくろうと思っても当社みたいに苦労してしまいますよね。一体とすることへの難しさはあると思いますが。

山本)そこまで大変な思いをしてつくろうとは思えないですよね。

代表)そうですね。加工を道外に任せきっていたということもあるでしょうね。

山本)北海道はそこからの脱却が求められますね。

代表)そうですね。意識の上での脱却が必要です。最初のニシン豊漁の時代から始まっていますよね。当時、北海道にはかなりのお金が集まってきたんですが、そのお金は全部、近江商人のところにいってしまったんですね。全て北海道をくぐって本州にいってしまったんで、いつまでも始点経済なんです。北海道には本物があるぞっていう形をつくらないと駄目だと思います。その拠り所をどこにどうやってつくっていくのかという課題があります。

山本)下司さんのような方が次々と現れるようになったら、北海道の素晴らしい素材を使った加工品がどんどんできることになりますよね。そういう仕組みづくりが大事なんでしょうね。

代表)もっと凄い人は沢山いますよ(笑)

山本)いえいえ。ご謙遜を(笑)。本日は素晴らしいお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

 

従来の産品に付加価値をつけ、ブランドを確立し、妥協を許さず、アイデアを結集し、地域を愛し、困難を乗り越えて挑戦を続けていく。

「㈱伝平さんの畑」さんの取材を終えた後、私はジム・ドノヴァンの名言を思い出しました。

 

『私たちが問題と呼んでいるものは、何かを教えてくれて、より高いレベルへと私たちを押し上げてくれる。』

 

問題というものを否定的に捉えるのではなく、自らが高みに昇るための試練と捉え、行動することによって、それを乗り越えた時に得るものもあるという積極的思考。

 

〔氷室熟成あつまいも選定中の下司代表〕

多くの困難に直面し、それを乗り越えてきたと話す下司代表でしたが、その表情は溌剌として、ユーモアを絶やさず、終始朗らかにインタビューに応じていただきました。

問題を“負”のものとしてではなく、自らを高めるためのハードルとして捉え、非常に前向きに取り組んでいらっしゃるという印象を受けた次第です。

頂いた数々の金言はもちろん「北海道食宝」であり、妥協を許さず取り組む姿勢、発展的思考や地域への想いをこれからの人たちに伝えていかなければならないものと感じております。

雄大な自然の中で育まれた素晴らしい北の食材たち。

そしてそれを昇華させる匠の技が人々の心をより豊かにし、人と人とを繋げてゆく「Hokkaido Foods Treasure」です。

ライズ北海道では「㈱伝平さんの畑」の商品を近日販売予定です。是非、同社の想いと共にその味をお楽しみください。

 

企業情報

◆企業名|株式会社 伝平さんの畑
◆営業|勇払郡厚真町京町19 交流プラザ徳永ベース内
◆電話番号|0145-27-2538

 

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