2021-06-30 「美幌トマカラサン」とは?びほろ笑顔プロジェクトの開発への想いに迫る|HFT8

「美幌トマカラサン」とは?びほろ笑顔プロジェクトの開発への想いに迫る|HFT8

美幌名物「美幌トマカラサン」とは?

(美幌トマカラサンと美幌峠)

北海道網走郡美幌町の特産品として2021年4月に販売開始となった「美幌トマカラサン」

地元で生産された唐辛子を乳酸発酵させて生み出した「旨味」に、地元生産のトマトを酢酸発酵させて配合した新たな調味料です。

平成24年、町おこしのために設立された合同会社「びほろ笑顔プロジェクト」が開発した“かけて食べるソース”です。

 

「美幌トマカラサン」ルーツ

(美幌峠の絶景)

美幌トマカラサンのルーツは「びほろ笑顔プロジェクト」の立ち上げに遡ります。

平成24年、町おこしのために設立された「びほろ笑顔プロジェクト」は、地元を元気にするため、会議所が中心となって異業種のメンバーが集まり、共同出資によって設立された合同会社です。

1人10,000円。そして、地元の美幌高校の皆さんも1人1,000円の出資をして設立され、

「豚から広がる ものづくり ひとづくり まちづくり」を理念としています。

最初に開発された商品は「美幌豚醤まるまんま」。

原材料には地元産豚肉を使用。生産から加工までを町内で行う“ものづくり”によって町全体を元気にするための商品開発がスタートしました。

 

地元特産品のトマト「なつのこま」「なつのしゅん」を使用

(ワークセンターぴぽろの収穫風景)

美幌トマカラサンに使用する加熱用トマトは、地元で専用栽培されています。

2017年より「社会福祉法人 北海道療育園 知的障害者通所授産施設」の「ワークセンターぴぽろ」と連携し、加熱用トマト「なつのこま」「なつのしゅん」の栽培を開始。その後、同トマトは北海道から美幌町の地域産業資源として指定され、地域経済にも大きく貢献するまでになりました。

 

美幌トマカラサン専用唐辛子「ハラペーニョ」「札幌なんばん」を栽培

(ワークセンターぴぽろの収穫風景)

美幌トマカラサンに使用されている唐辛子「ハラペーニョ」と「札幌なんばん」は、ワークセンターぴぽろの農場で栽培されています。

数ある品種の中から食味が加熱用トマト「なつのしゅん」「なつのこま」と相性の良い品種として選択されました。

美幌トマカラサン専用の唐辛子として、種から苗を起こし、定植、収穫まで一連の流れを確立しています。

美幌トマカラサンの原材料選定にあたっては、カプサイシンが多く含まれる唐辛子が注目されました。

暑い夏、極寒の冬、オールシーズンで食欲を引き出し、健康促進に繋がる唐辛子。その栽培連携の確立を目的として、新たにワークセンターぴぽろに栽培を委託し、唐辛子の乳酸発酵食品が完成。使用する乳酸菌は「北海道更別農業高校」で発見された自生菌が使用されています。

尚、発酵技術指導に関しては、企業組合北見産学医協同センターの指導を受け、技術移転されました。

酢酸発酵したトマト、乳酸発酵した唐辛子(パウラージャ)から新たな美幌発祥の調味料が完成となったのです。

 

唐辛子の乳酸発酵

(ワークセンターぴぽろで栽培中の唐辛子)

北見産学医協同センターの指導のもと、塩分濃度4%で唐辛子を乳酸発酵させるテーブルサイズの実験は成功。辛さの中に旨味を感じる乳酸発酵の唐辛子(パウラージャ)が完成しました。

その後、思考錯誤を繰り返した結果、塩分濃度を8%にすることで乳酸発酵が安定し、発酵条件を確立させることに成功しました。

 

美幌トマカラサンの食べ方

ピザにタバスコ風に掛けたり、揚げ物に掛けたり、餃子に付けたり、スープに垂らしたり、麺類を味変で楽しんだり、肉料理(しゃぶしゃぶ・焼き物など)にも相性の良い商品です。使い方次第で無限の楽しみ方が広がります。

 

 

びほろ笑顔プロジェクトの大友室長にインタビュー

合同会社 びほろ笑顔プロジェクト 商品開発室長 大友真佐美さん
取材:ライズ北海道  山本、吉本(撮影)

創業の経緯、企業理念について      

(商品開発室長 大友真佐美さん)

山本)本日はお忙しい中、お時間をいただき、ありがとうございます。

大友室長)こちらこそ、よろしくお願いします。

吉本)実は今回初めて美幌に来ました。そして、先ほど道の駅(「ぐるっとパノラマ美幌峠」)の展望台から壮大な景色を見て感動しました。あの風景だけで美幌が素晴らしい町だということを感じました。

室長)ありがとうございます。「屈斜路湖」は日本最大のカルデラ湖です。透明で綺麗ですよね。道の駅には「美空ひばり」の歌「美幌峠」の歌碑もあります。

山本)ひばりさんの歌、聞いてきました(歌碑から歌が流れている)。

室長)以前はもっと多くの方が来てくださっていたのですが、産業の衰退もあって、今では釧路から北見や網走に向かう人が通過する町になってしまいました。人出が少ないのは、コロナの影響も大きいですね。それでも週末は少しずつですが回復してきているようです。

山本)早くコロナ前の賑わいを取り戻して欲しいものですね。道の駅では売店にも立ち寄ったのですが、御社の商品が沢山販売されていました。

室長)そうなんです。ありがたく思っています。

吉本)「美幌トマカラサン」を始めとして、御社製品がずらりと並んでいました。

(道の駅「ぐるっとパノラマ美幌峠」で販売されていた開発商品)

室長)2009年、美幌商工会議所のブランド開発委員会の設立からスタートして「まるまんま」という肉醤一本から全てが始まりました。最初のスタートは豚なんです。その昔、美幌には“養豚団地”と呼ばれる地区もあった程、養豚が盛んだったんです。

山本)そうだったんですね。

室長)そこから「豚から広がる ものづくり ひとづくり まちづくり」というものを企業理念にしています。美幌は農業が盛んな町なので、その素材を使った特産品をつくり、町自体のPRもできればと思っています。皆さんに美幌の魅力を知って貰い、来ていただくということが目的の会社なんです。

山本)なるほど。

室長)町内には自衛隊もあって、最盛期の人口は約24,000人にもなったのですが、今は18,000人程まで減少してしまいました。そういった状況もあるので、地元の素材を使って魅力ある商品をつくり、地域を盛り上げていければと取り組んでいます。

山本)美幌愛を感じました。大友さんは美幌町のご出身ですか?

室長)いえ・・・ガチガチの北見出身です(笑)。今でも北見から通っていますが、子育てがひと段落したら移住しようと考えています!

山本)そうですか!益々凄い!北見ご出身なのに、その熱い美幌愛!

室長)ほぼ美幌にいますから。

一同)(笑)

吉本)ご縁があったのですね。「びほろ笑顔プロジェクト」へはどういった経緯でお入りに?

室長)私は元々、北見にあるオホーツク圏地域食品加工技術センターにいました。在籍当時に美幌町の商工会議所の方や委員会の方が特産品を開発するのに来られていて、その担当が私でした。

山本)では、ヘッドハンティング?

室長)いえ。丁度任期が終わる頃で。その際に美幌ブランド開発の会社を設立するというお話がありまして。

山本)お声が掛かったのですね。

室長)はい。ただ、ゼロからのスタートだったので、難しいなと思うところはあったのですが。

山本)大変ご苦労されたと思います。でも、どんどん商品開発という形で結果を出されていますよね。

室長)いえ。販売はまだまだなので。もっと売れる様にしなければと。

山本)我々も微力ながら少しでもお手伝いができればと思っています。

 

商品開発について      

(「美幌豚醤まるまんま」のパンフレット)

山本)開発は大変だったでしょうね。

室長)そうですね。豚というところから始まって、次にアスパラというテーマがあり、現在取り組んでいるトマトというところまで来ました。最初の「まるまんま」は美幌高校の生徒と一緒になって開発しました。今使っているトマトは障害者施設「ワークセンターぴぽろ」の方々につくって貰っています。元々畑作を行っていて、就業の種類が沢山あった方がいいということで、一からお願いした次第です。

山本)トマトは「美幌トマカラサン」などの原料用ですね。

室長)そうです。実は最初はトマト農家さんの畑を借りて、自分達で植えて収穫してということをやっていました。彼女(横にいたスタッフの方)を騙して畑に連れて行って(笑)

山本)「聞いてないよ~!」って怒られませんでしたか?(笑)

室長)怒られました。

一同)(笑)

山本)それも大友さんの情熱の形でしょうね。

室長)作業着を着て貰って、虫がいっぱいのところに連れて行ったんです(笑)。そんなこともありながら、最初の商品開発から今年で丸9年になります。

吉本)僅か9年でこれだけ形にしてきたのは凄いです。

室長)これで数字がついてくればいいのですが。商品の開発ができても、やはり販売に特化していないので。そこが難しいところですね。

 

(ワークセンターぴぽろで栽培中のトマト)

山本)開発はもちろんのこと、商品の販売も含めて色々な方との繋がりも大切なんでしょうね。

室長)道庁主催の「フード塾」がありますよね。北海道の選抜された方々が「絶品づくり」を学ぶ会なのですが、私はオホーツク振興局から推薦されて参加し、ノーステック財団さんを始め、そこで1年間多くの方々と交流させていただきました。マーケティングも含めて色々と勉強もさせていただきましたし、そこで余湖農園さんに出会ってトマトについて教えていただきました。これならできると感じて取り組んだことが、その後のトマト関連製品の開発に繋がっています。フード塾の先生にも来ていただいたり、本当にゼロからのスタートでしたが、何とかここまでやってきました。

山本)葉加瀬太郎のバイオリンが聞こえてきそうですね。

吉本)??、情熱大陸ですか?

一同)(笑)

室長)いつか出演できたらいいですね(笑)。そのためには商品が売れないと。

山本)応援しています。大友さんの熱意が伝わるような発信や販売も含めて、ライズ北海道も協力していきたいと思います。

室長)資本も多くは無いので、今後もノーステック財団さんの支援を活用させていただいたり、町の人達にも携わっていただいて、着実に伸ばしていければと思います。

 

ノーステック財団の支援について      

(美幌駅内の物産館「ぽっぽ屋」で販売されていた開発商品)

吉本)ノーステック財団との関わりについて教えて下さい。

室長)はい。実はノーステック財団さんとは長いお付き合いで、もう5年連続で開発支援を受けています。

吉本)5年連続ですが!?凄いですね・・・

室長)そうなんです。担当の方にも貴方のところくらいだよと(笑)・・・言われました。

山本)ノーステック財団の方々も御社の取り組みには感嘆されていましたよ。

室長)財団さんのご支援にはいつも感謝しています。以前にパスタ(麺)をつくっていたこともあるのですが、その時からお世話になっています。

美幌町の加熱用トマト生産の立ち上げでもお世話になっていて、「美幌トマトケチャップ」「美幌ミートソース」、そして今回の「美幌トマカラサン」と、これまで多くの支援を頂いています。

吉本)具体的にどういったところで支援事業を活用されていますか?

室長)私たちは「発酵」という所に最もこだわりを持って研究開発を進めています。やはり、菌は生き物ですので安全に発酵を進めなければなりません。そのためにはノーステック財団さんの支援が非常に重要でした。北見工業大学さんを紹介して頂き、乳酸菌の培養と安定化について研究を手伝って頂いています。

発酵研究の資金に用いたり、商品パッケージやデザインなどにも幅広く活用させて貰っています。

 

(ワークセンターぴぽろのハウス内で語る大友室長)

山本)トマト関連以外でも開発のご予定はありますか?

室長)美幌高校と協力してアイスクリームを開発しました。味はトマト、アスパラガス、にんじん、かぼちゃの4種類です。こちらもノーステック財団さんに開発支援をいただいています。

山本)かぼちゃ味はイメージできますが、他の3つは想像もできません。

室長)どれも美味しくなるように開発支援していただきました。色々あって販売が1年延びてしまったのですが、今年ようやく販売に漕ぎつけました。先のパスタから始まってその後5年連続で支援をいただいて、この度のアイスクリーム「BEAUTY HILL ICE CREAM」と「美幌トマカラサン」が最新の商品です。

山本)デザインの方ですが、アイスクリームはキュートなパッケージですね。「美幌トマカラサン」の方はかなり攻めたデザインですし。こだわっていますね。

室長)美幌出身のクリエーターさんに手掛けて貰っています。札幌を拠点にしている方で、地元応援ということで協力していただきました。

山本)デザインも地元繋がりですか。開発支援が力になっていますね。

室長)本当に感謝しています。これからも色々と相談させていただければと思っています。

 

北海道の食の未来について      

(美幌峠からの景色-2021/7/27撮影、生憎の曇天)

山本)最後に北海道の食の未来についてお聞きします。どのようなお考えをお持ちですか?

室長)北海道には各地に様々な美味しい物が揃っているので、北海道全体が協力をしながら、地域毎の魅力を出していけるような取り組みができれば、より良い未来が開けると思います。人の魅力で差をつけて“ものづくり”をしていくことが重要ではないかと考えています。

山本)確かに御社の商品開発には多くの美幌の方々が携わっていますよね。

室長)地元の皆さんの協力なしでは何も産まれませんでした。その皆さんの“想い”に応えられるような商品づくりを目指しています。

吉本)「人の魅力で差をつける“ものづくり”」ですか。

室長)そうですね。また、今後はより「健康」というテーマにも力を入れていきたいと思っています。やはり健康があっての「人」なので、発酵を軸として、美幌発信で人の健康に繋がる商品を作っていければと考えています。北海道は一次産業だけでは無く、加工品も美味しいよねと言われるように取り組んでいきたいです。

山本)健康は大事ですよね。御社のこれからの開発が楽しみです。

室長)美幌トマカラサンもそうですが、開発した商品の魅力が美幌町の子供たちにも伝わるように頑張っていきたいです。成長して大人になった時、美幌町にはこんな美味しいものがあるんだよ!って言ってもらえたら最高ですね。

新型コロナ感染拡大の影響で人の移動が激減し、美幌町も例外ではありません。足を運んでいただく観光客が減って、その影響は大きなものになっています。この厳しい状況の中でも私たちが開発した商品によって皆さんが笑顔になって貰えるように取り組んでいきたいと思っています。

山本)期待しています!本日は貴重なお話をありがとうございました。

 

 

『人の魅力で差をつける“ものづくり”』

 

大友さんから美幌町への愛、商品へのこだわり、開発に掛ける熱い想いをお聞きし、我々としても可能な限りご協力がしたいものと強く思いました。

素材の栽培から研究・加工・販売までを地域の力で完結し、開発するからこそ、その商品に魂が生まれ、多くの方々に応援して貰えるものになっていくのだと実感した次第です。

 

(ワークセンターぴぽろの作業風景)

近く、当ショップでも「びほろ笑顔プロジェクト」の商品を販売します。今後も同社の商品開発に注目していきたいと思います。

 

 

商品概要・沿革

<美幌トマカラサン>
◇加工:合同会社味噌精肉店
◇生産:北海道療育園ワークセンターぴぽろ
◇販売:合同会社びほろ笑顔プロジェクト
◇開発支援:ノーステック財団
◇開発援助:企業組合北見産学医協同センター
◇コーディネーター:美幌商工会議所
◇管理事務所:合同会社びほろ笑顔プロジェクト

<びほろ笑顔プロジェクト沿革>
2009年5月 美幌商工会議所内に美幌ブランド開発検討委員会を設立、特産品の開発開始
2012年3月 地元高校との連携で、豚肉ベースの醤油調味料「美幌豚醤まるまんま」完成
2012年5月 商品販売に向け会社設立
2014年6月 地元アスパラガスの切り下有効活用の取り組み開始
2015年5月 加熱用トマト栽培・加工の取組開始
2018年1月  「美幌トマトケチャップ」販売開始
2019年3月  「美幌ミートソース」「美幌とまポン酢」販売開始
2021年4月  「美幌トマカラサン」販売開始

 

企業情報

◆企業名|合同会社 びほろ笑顔プロジェクト
◆住所|網走郡美幌町字仲町1丁目44-1 美幌商工会議所内
◆電話番号|0152-73-5251

 

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