2020-08-04 百年企業 岩内”一八興業水産”の経営と開発力に迫る|HFT6

百年企業 岩内”一八興業水産”の経営と開発力に迫る|HFT6

現在、世界中から注目されている「北海道ブランド」。

広大で肥沃な大地とパイオニアスピリッツから生み出される名産品の数々は、多くの人々を魅了して止みません。

雄大な自然が溢れる北海道は正に食の宝庫です。

厳しい気候の中、作物の特性に向き合い、自然と調和しながらも時にはそれに抗うための工夫を重ね、手間暇を惜しまずに大切に育て上げられたこだわりの野菜やくだもの達。

対馬暖流と親潮がもたらす栄養に富んだ海から水揚げされる新鮮な魚介類。

秋の収穫期には、米や小麦を代表とする穀物が眩いばかりの金色の絨毯を織り成し、私たちに多くの恵みを与えてくれます。

そんな食の宝庫である北海道ですが、その恵まれた素材や原料を生かした魅力的な加工食品も多く製造されています。

古くより大切に守り伝えられてきた製造技術やノウハウが存在する一方、我が国では最も新しく拓かれた地ということもあり、従来の風習に捉われない北海道的な気質から生まれた新たな商品も数多く登場しています。

「温故知新」。歴史や伝統を踏襲しつつも、日々飽くなき新たな挑戦が続けられており、本道における食品加工技術は更なる高みを目指して向上を続けています。

ライズ北海道では道内において優れた食への取り組みを行っている企業や団体、また個人も含めて「北海道食宝」としてご紹介しています。

北海道の食産業に携わる方々の情熱や想いを知り、それを感じて頂くことによって、一人一人が刺激を受けたり、インスパイアされる。それが北海道全体の昂りや興隆に繋がればという願いを込めて、今後も鋭意取材を続けていきたいと思っています。

今回、お邪魔したメーカーさんは岩内の「一八興業水産株式会社」さんです。

1914年(大正3年)創業と非常に長い歴史を持つ老舗水産加工メーカーで、レトルト殺菌器を所有しており、ニシンをはじめとした先進的なレトルト商品の開発を続けておられます。

この記事の中では、同社が如何にして100年超もの間、健全な経営を続けてこられたのか?更にはその類まれな商品開発力についても迫っていきたいと思います。

お忙しい中、お時間を頂き、インタビューを行って参りました。

情熱溢れる紀代表のお人柄、心に響く経営哲学満載のインタビューをご覧下さい。

代表取締役 紀哲郎さん(一八興業水産株式会社)
広報担当 紀加奈子さん (一八興業水産株式会社)
取材=山本、吉本(撮影)

創業100年を越える一八興業水産の歴史について

〔インタビューイー|紀代表(左)と広報担当の紀さん(右)〕

山本)本日はお忙しい中、お時間を頂きありがとうございます。
先ずは御社の長い歴史をお聞かせください。

紀さん)本日はよろしくお願いします。当社の創業は1914年(大正3年)です。今の社長、私の父で3代目になります。創業から100年以上になるので、もう4代目、5代目でも不思議ではないのですが、初代が長い間務めた結果、現在に至ります。

山本)紀さんが4代目ですね。

紀さん)いえいえ(笑)。私は去年入ったばかりで、この7月でまだ1年です。それまでは東京・大阪にいました。現在は広報、販売を中心にやらせて貰っています。

山本) 初代は元々北海道の方ですか?

紀さん)初代は新潟県の佐渡から北海道に渡ってきました。当時のこの辺りは加工屋も多く、賑わっていたこともあって、この地での創業を決めたようです。

紀代表)岩内に知人がいたということもあるようですが、新潟と同じ日本海側ですし、当時岩内が栄えていたということも大きかったと思います。満州か北海道のどちらかに行けと言われたそうですが、今では北海道を選んでくれて本当に良かったと思っています(笑)

(古き良き日本の雰囲気を感じる事務所)

山本)こちらの事務所も歴史が長いようですね。

紀さん)ここは1969年(昭和44年)に建てられました。昭和29年の岩内大火では当社も含めてこの一帯が殆ど燃えてしまったようで、当時は皆大変な思いをしたそうです。この事務所はその大火のだいぶ後に建てられたものです。

山本)元々は身欠きニシンや数の子の製造中心でやってこられたのですね。

紀さん)現在でも売上の8割は身欠きニシンと数の子が占めていて事業の軸になっています。

 

企業理念とこだわりについて

(一八興業水産の代表的なレトルト商品)

山本)御社の企業理念とこだわりをお聞かせください。

紀代表) 「誠実さ」と「お客様を裏切らない」「取引先を裏切らない」ということを大事にしています。また、常に適正な商売を心がけていくということを大切にやっています。

山本)利益優先で自分本位になってしまう企業も多いかと思いますが。

紀代表)老舗ということもあり、地場の人たちと地場の素材・食べ物を大切にしています。地域との繋がりがあって、はじめて商売ができているということを忘れずにやっていければと思っています。

山本) 利益は二の次ですか?

紀代表)どうでしょう?(笑)。商売が上手いと言われたことはありませんが(笑)

山本)ご謙遜を(笑)。次々と先進的な製品を開発されていらっしゃるではありませんか。

(数の子製造作業)

紀代表)どの老舗も同じだと思いますが、様々な難局を乗り越えてきたからこそ、老舗として続けられているのだと思います。長く続けていくためには目まぐるしく変わる時代の変化に対応する事が必要です。その時その時の状況を打開するためには、やはり新しい時代への対応力というものが求められると思います。
例えば、日本海側の水産加工はニシンを原料として、身欠きニシンや数の子の生産を中心にやってきました。ずっとそれに固執して胡坐をかいてきたわけです。それ以外のことには目もくれなかった。なぜかというとそこそこ儲かっていたからです。でも、やはり時代と共に消費者の心理も嗜好もどんどん変わってきているので、それに合わせたものをつくっていく必要があります。だからこそ当社では以前から色々なことに取り組んできたわけです。ただ、そこまでやってきても商品化されたのはほんの一握りですし、それらについても未だに儲けが出ていないというのが現状です(笑)

紀さん)昔、この辺りには何十社も加工屋があったそうですが、今はもう数軒しか残っていません。生き残っていくためには新しいことにチャレンジをして、時代の波に乗っていかなければならないものと思っています。市場だけではなく、小売りにも対応していけるように開発を重ねた結果、今の業態に至っています。

 

商品開発とノーステック財団の支援について

吉本)先日、札幌で「にしんめし」を購入したのですが、店頭には在庫が1個しかありませんでした。家族で分けて美味しく頂きました。

紀さん)ちょうど注文が入っていた時期でした。1つでも残っていて良かったです(笑)

吉本)「にしんすぱ」と「にしんめし」の開発には相当な苦労をされたようですね。特に骨の扱いについて大変だったそうで。

紀さん)そうですね。ニシンはとても小骨が多いので。昔の人であればそのまま骨ごと食べて、喉につっかえたらご飯を噛まずに飲み込んでいたのでしょうが(笑)
今の若い人は魚自体あまり食べません。魚の身をほぐして骨を取るのが苦手だという人も多いですし、面倒だからそもそも魚を食べないという人も結構います。私自身もこの家で生まれ育ちましたが、ニシンを骨ごと食べるのは無理です(笑)

(にしんについて語る紀さん)

山本)そうなんですか(笑)。そういった問題を解決していくことが必要なのですね。では御社の開発の歴史をお聞かせ頂けますか。

紀さん)鱒を使った「いただきます」(※1)と販路拡大を狙って開発した「めんこちゃん」あたりがはじまりになります。「いただきます」は、父がネーミングを考えていた時、2~3才頃の私が発した言葉がそのまま商品名として採用されたものだそうです(笑)

一同)(笑)

紀代表)新しい発想でつくったものとしては「めんこちゃん」でしょうか。きれこ(傷物のたらこ)をほぐして辛子明太子のような味付けにした商品です。加工業というのは製造過程でどうしてもロスが出てしまいます。商品にならない部分、処分価格として安値で叩かれてしまうものなどを生かして開発した商品が「めんこちゃん」でした。おかげで利益を増やすことに成功しました。

紀さん)その後、道産ニシンを原料とした「にしんのおかげ」(※2)を開発しました。元々当社で扱っているニシンは殆どがアメリカ産です。現在は道産ニシンも放流の成果が出始めていて、漁獲量も増えてきてはいるのですが、アメリカ産と比べてまだ脂は少ないです。ただし数の子としての道産品の価値は高くて、特に留萌方面で多く利用されていますが、雄の方はまだ利用が進んでいません。これに付加価値を付ける目的で「にしんのおかげ」を開発しました。

吉本)「にしんのおかげ」は受賞製品ですよね。(※2)

紀さん)そうなんです。この商品の存在によって、お土産屋さんなどに販路が広がりました。その後も地域の地場産業サポートセンターとタッグを組み、助成金制度を利用できるような商品開発を行ってきました。結果、現在はノーステックさんに支援を頂いているという経緯もあります。

山本)ノーステック財団と最初に開発されたのは「にしんすぱ」(※3)ですよね。

紀さん)そうですね。ニシンの製品は和風のものばかりだったのですが、元々ヨーロッパでも沢山食べられている魚ということもあり、何か洋風のものがつくれないかということでノーステックさんに相談したのがはじまりです。

山本)確かに「にしんすぱ」は洋風のオイル漬けですね。色々アイデアは出たのでしょうか?

紀さん)様々なアイデアが出たようです。「にしんすぱ」以外にも手を掛けたものもあったそうですが、最終的に落ち着いたのが「にしんすぱ」でした。

山本)ネーミングにインパクトがありますよね。最初はどうやって食べるのだろう?と思いましたが。

紀さん)なりますよね。なにこれ?!って(笑)。ニシンそばがヒントになっています。「にしんすぱ」が販売されると今度は地元のご年配の方などから和風の甘露煮を求める声があり「にしんめし」(※4)が開発されたという経緯があります。

山本)なるほど。ご年配の方は元々ニシンを食べてきてますからね。先の「にしんすぱ」のターゲットは若者ですよね。

紀さん)開発段階でのメインターゲットは「忙しいお母さんたち」でした。手間いらずでお子さんに食べさせられる商品をつくるというもので、その後、若い方や女性にも馴染めるようなコンセプトとなり、テーマが洋風となりました。

山本)こだわりと想いが詰まった魅力的な商品ですよね。でもご苦労されたようですね。

紀さん)特に東京などではニシンに馴染みが無いので「あの骨が多い魚でしょ?」みたいな感じで言われてしまいます。独特な臭みがあるということもあり、この2つのネックを解消するために苦労を要しました。骨に関しては、回り回ってレトルト処理機に辿り着き、ニシンの臭みについては釧路フィッシュさんが鯖の臭みを消した技術を活用させて貰っています。ホエイに漬け込んだ方が身も柔らかくなって子供も食べやすい食感になりました。

紀代表)本当に色々と苦労しました。何回も止めようとしましたが、ここまできたのだから止める訳にはいかないと思いましたし、色々な方々が手伝ってくれたことに応えたいという気持ちもありました。

山本)様々な困難を乗り越えて完成されたのですね。では「にしんすぱ」のノウハウを得た後の「にしんめし」はすんなりといったのでしょうか?

紀さん)いえ、簡単ではなかったようです。骨や臭みについてはノウハウを流用できたようですが、味付けや食感の部分で難航したようです。甘露煮自体、既に多くの製品が市場に出回っているので差別化が必要でした。そういった中で当社の製品については化学調味料を無添加とし、数の子を入れて食感を出すなどの工夫も取り入れています。

吉本)先日食べましたが、確かにつぶつぶが入っていました。数の子だったのですね。

紀さん)普通の数の子では熱を掛けるとブヨブヨになってしまうのですが、元々食感の悪いものに熱を掛けると逆にプチプチ感が残るようになりました。それをうまく使っています。

(レトルト殺菌器の前にて)

山本)独自のアイデアが盛り込まれているのですね。話は変わりますが、元々レトルト器はお持ちではなかったのですね。

紀さん)そうです。地域産業サポートセンターに小さいテスト器があったので、当初はそこで実験をして、商品の製造にも利用させて貰っていましたが処理能力に限りがありました。一日に何往復もしなければならないため、業務が回りません。そこで自社にレトルト器を導入するべきだとの結論に至りました。しかし、高額な設備なので助成金を活用できないものかについて検討を重ねました。結果、形などの理由で出荷できない地元岩内産のトマトを活用し、当社のこれまでのニシン加工技術と合わせて新たな商品をつくるアイデアをまとめ、「さかなかな」(※5)の開発に関して助成金を頂くことができました。

吉本)貴重な設備なのですね。

紀さん)買ったからにはしっかり使わないと(笑)

紀代表)よく実験で使いたいという相談があり、某社からは鮭の切り身を小さくして常温商品にしたいという話もありました。スキャロップさんのレトルト商品は当社で処理を請け負って協力しています。

山本)需要が多いですね。常温で流通できると便利ですからね。

紀代表)そうですね。特に今後は新型コロナの影響もあって、常温商品が見直されて需要が高まっていくので、よく「いい時にレトルトの設備を入れたね」と言われます(笑)

山本)ノーステック財団の支援もありました。

紀代表)そうですね。もうかれこれ5~6年になりますね。当時、伊東さんには随分とお世話になりました。また、水沼さんや杉山さんにも様々な面でご支援を頂き、人と人との繋がりもつくって貰いました。私もノーステックさんに助けて貰った分、今ノーステックさんにお世話になり始めた人たち、また、今後ノーステックさんに相談をしようとしている人たちに対して、自分のできる範囲で手助けができたらいいなと思っています。

山本)やはり人と人との繋がりは大事なんですね。

紀代表)そうですね。一人では不可能なことも、皆が集まって大きな力になれば乗り越えることができます。今、この地域の中で、厳しい状況におかれている方もいます。お互いに弱い部分をカバーし合ってやっていければと思っています。近頃は、他所からの相談も入ってくるようになりました。丁度今はホタテ貝柱のロスを生かせないものかという相談があって、開発を手伝っているところなんです。

(岩内漁港)

山本)では「困った時の一八さん」という流れが出来ているのですね?

紀代表)一度も話したことが無い人からも相談されますね(苦笑)、在庫が余ったからどうにかして欲しいと言われたので「なぜ私に?」と聞いたら色々開発してるようだからと(笑)

紀さん)新商品が出る度に新聞の地方版などにも取り上げて貰っているので、ご存じなのかと思います(笑)

山本)では、紀代表の開発者魂は4代目に引き継がれていくのですね。

紀代表)この人はぜんぜん作れないから(笑)売る方専門でやって貰います(笑)

紀さん)私は試食をして意見を出しています。これは売れる、これは売れないと(笑)

 

経営ついて

山本)初代と2代目も常に新しいものに取り組んでおられたのですか?

紀代表)社名に「興業」が入っている通り、初代はありとあらゆることをやりました。木炭業やパンも作りましたし、同じく粉を使った製品ではうどんなども作りました。ところが水産以外のものはことごとく失敗した結果、今の社の姿に至りました。誰かが新しい話を持ってくると直ぐに飛びつく人で、共同で始めた事業もあったそうですが、結局は相手に全部いいところを持っていかれたとか。

山本)バイタリティーがあって、様々なことに興味を持たれた方だったのですね。

紀代表)そうですね。自分の祖父ではありますが凄い人でした。商売だけではなくて八興会館という武道館も設立しています。昭和29年にこの辺一帯が大火で焼け野原になった後、いわゆる当時でいう愚連隊(不良)という悪さをする子供たちの集団が結構あったそうです。その子たちを更生させるために、初代の伊右エ門は私財を投じて武道館を建てて先生を呼び、剣道や柔道を習わせたそうです。商売だけではなく、そういった社会的な活動もやっていた人でした。私達家族にしてみれば、そんなことばかりしていないで商売をやれよと思いましたが(笑)、佐渡から単身で渡って来て、世のため人のためというポリシーを持って生きていた人でした。

(一八興業水産三代目 紀哲郎社長)

その反面、私の父、二代目は新しいことはしない「守りの人」でした。先代が様々なものに手を出してきて、その尻ぬぐいをずっとやってきたものですから、そうなって当然と思うところもあります。とにかく極力、挑戦はしない人でした。だから私はその両方を見て、どちらが良くて、どちらが悪いということではないのですが、いいとこ取りができればと思ってやっています。

山本)堅実な経営と新しい取り組みの両立ですね。

紀代表)堅実にできてるでしょうか?(笑)、何かにつぎ込んだり、散財したりなどは一切ありませんが(笑)、可能な限り新しい取り組みのためには惜しまずに(経費)使っていければと思っています。私が子供の頃、一八ならではの商品というものが無かったので、私がつくった商品が後世に残ればいいなという願望はあります。

 

新型コロナの影響について

吉本)新型コロナ感染拡大の影響は出ていますか?

紀さん)売上自体そんなには落ちてはいませんが、ただ商流が変わってくるのかなと。基本的には市場に卸しているものが多くて、身欠きニシンと数の子は大きな単位でまとめて出して、市場側で売って貰っています。それが今までずっとやってきた形でしたが、市場というもの自体が昔と比べると人が行かなくなってきています。現在では当社の商品も商社さんに扱って貰えるものが増えてきているので、そういったものをお土産物屋さんやECで販売していければと思っています。

(当店スタップが「にしんすぱ」を試食した際の調理例)

山本)変化の時を迎えているのですね。

紀さん)そうですね。商材の切り替え時期を迎えているということもありますが、新型コロナの影響でそれが顕著になった部分もあります。伝統を守りながらこれからも作り続けていくものもあるのでベースはベースとして持ちながら、プラス分で新しいものを開発していければと思います。

 

今後の販売展開について

(身欠きニシン製造風景)

山本)「にしんすぱ」と「にしんめし」は温めてそれぞれパスタと御飯に乗せるだけで食べられる簡単で便利な商品ですよね。

紀さん)温めなくても大丈夫です。常温でも美味しく頂けます。水産加工品の保存は冷凍や冷蔵という常識がありましたが、これらは常温保存が可能ですので送料にクール料金が掛かりません。結果、販売価格が抑えられて、消費者の方に安くご提供できるということにも繋がっています。

吉本)道の駅に置いてありましたよね。札幌駅の「どさんこプラザ」でも販売されていますし、盛況ですね。

紀さん)ありがとうございます。ただ当社としても、このような商品ができたのは最近のことなので、まだ販路の確立には至っていません。札幌の”どさんこプラザ”にはテスト販売をさせて頂き、ようやく今月から定番商品として置かせて貰えることになりました。

山本)数多の商品がある中、熾烈な競争を勝ち抜いたのですね。

紀さん)そうですね。今はほっとしています。ただ残念ながら東京の”どさんこプラザ”では採用して貰えなかったという現実もあります。改めてチャレンジはしたいと思っています。

吉本)応援しています。他に販路はありますか?

紀さん)量販向けについては、在庫数量の確保条件などが厳しいので出していません。現在は身の丈にあった範囲で取り組んでいます。このコロナ禍でまだどうなるかは分かりませんが、10月に池袋で物産展があるので、開催されれば参加してみたいと思っていますし、今後は東京の展示会等にも積極的に参加して、ニシンのPRをしていければと思っています。
また、可能な限り色々な媒体で名前と商品を知って貰えるように、露出を増やしていければと思っています。

 

北海道の食の未来について

吉本)北海道の食の未来と御社の展望についてはどのようにお考えでしょうか?

紀代表)水産で言うと北海道ではまだまだ資源として使えるものが沢山あるので、それをうまく加工業者が利用できる様になればいいなと思います。新型コロナの感染が拡大してから、岩内の市場では魚の取引価格が暴落しています。生産者が厳しい状況です。今まで私達はアラスカから輸入した原料を使って身欠きニシンや数の子を製造してきましたが、わざわざ地球の裏側から運んできていたのです。果たしてそれはいいことなのか?と考えるいい機会にもなりました。既に今回、何軒かで原料を変えた加工業者さんが出てきましたし、今後も出てきそうな感じです。何れ当社もその中に入るかも知れません。前浜で魚が上がっていて、放流事業の成果も出てきている。ニシンが豊漁になってきている。だからこそ今、そういったところにもう一度、目を向けて地場の原料を元に製品をつくっていければいいのかなと考えています。

(にしんの説明をしてくれる紀さん)

山本)地域のものを利用して、地域全体で盛り上がっていくということですね。

紀代表)そうですね。実は日本に戻ってきたニシンはあまり美味しくはないのですが、少しずつ脂の乗りが良くなってきていますし、それを上手く利用できるように取り組んでいければと。レトルトのニシンの商品についても今後は国産、道産原料をベースに開発できればと思っています。

山本)それは喜ばしいことですね。近年はサンマやイカが獲れなくなるなど悪い話しか聞かなかったので、ニシンが増えて味も良くなってきたのは明るい話題です。

紀代表)そうですね。もっと脚光を浴びてもいい話だと思います。みなさんアラスカ産の在庫がまだちょっとあるので、無くなったら北海道産に切替わりますから、その時は大々的にPRしてもいいのではないかと思っています。先日、ぎょれんさんもオスの使い道をもっとアピールしていければと言っていました。オスは殆どがミール(身を細かくすり潰したもの)になります。エサや肥料などへの二束三文の利用です。私も色々と試してはいるのですが、もっと道産原料の活用が進めば、北海道の食の未来は変わってくると思います。

 

歴史と伝統を守りながらも常に新たな挑戦を続け、人と人との繋がりを大事にし、誠実さをモットーとして、時には遊び心も取り入れ、地場を大切にし、堅実な経営を続けて、長く続いてゆく。

一八興業水産さんの取材を終えた後、私はダーウインの名言を思い出しました。

『最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。唯一生き残ることが出来るのは変化できる者である。』

三代100年以上続く一八興業水産さんは、初代が「興し」、二代目が「守り」、正に変化の時を迎えた今、三代目が「変える」という仕事に取り組まれています。

各時代のトップがその時々で求められたものに対応し、社会の流れを捉えて変化を続けてこられた結果、100年以上もの歴史を紡いでこられました。

そして三代目の開発者魂は留まることを知らず、日々、新たな商品開発が続けられています。

(販売所で”にしんめし”について説明してくれた紀さん)

代表の語った言葉の中には”情熱”と”自信”が垣間見えましたが、何よりも終始感じたのは大きな”愛”でした。

頂いた数々の金言はもちろん「北海道食宝」であり、その”熱量”と”想い”をこれからの人たちに伝えていかなければならないものと感じております。

雄大な自然の中で育まれた素晴らしい北の食材たち。

そしてそれを昇華させる匠の技が人々の心をより豊かにし、人と人とを繋げてゆく「Hokkaido Foods Treasure」だと思います。

ライズ北海道では「一八興業水産」さんの商品の販売を開始致します。是非、同社の歴史やストーリーと共にその味をお楽しみください。

 

 

※1.鱒(マス)のロスを活用したフレーク。
※2.にしんを原料とした「にしん味噌」。加熱処理に「日本海岩内海洋深層水」を用いるなどの独自製法で仕上げた商品。第18回北海道加工食品フェア優秀賞受賞、調味料選手権2011入賞。
※3.ホエイと「日本海岩内海洋深層水」を使用し、レトルト殺菌処理を施したにしんのオイル漬。にしん特有の臭みを抑え、骨ごと食べられるようにしたことで苦手な人も手軽に親しめる製品。ノーステック財団開発支援商品。
※4.道産のにしん、昆布、数の子を使用した甘露煮風のレトルト商品。
※5.にしん、スケソウダラ、地元産トマトを原料としたミンチボール商品。小樽「オステリア・イル・ぴあっと・ヌォーボ」三輪シェフ監修。

 

企業情報

◆企業名|一八興業水産株式会社
◆住所|岩内郡岩内町字大浜68‐7
◆電話番号|0135-62-1811

 

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