今年も取材のシーズンがやって参りました。今年度最初の取材は札幌市にある「株式会社グラッド」さまです。
マーケティングプロモーション事業を軸とする会社が、なぜ「エゾリッチ」や「ソイビーツ」という食品の開発をしているのか…そこには開発者の食に対する“想い”や愛犬に対する“想い”、自然に対する“想い”など、非常に様々な“想い”が原動力となって、新たな商品が生まれるストーリーが存在しました
そんな“想い”を掘り下げるべく、じっくりとお話しを伺ってきましたので、今回のインタビュー記事を是非ご覧ください。
みなさまに商品開発者である奥寺さんの“想い”について、記事を通してお届けいたします。
Dear(Deer) for You 命を繋ぐ商品開発~札幌市・株式会社グラッド~
株式会社グラッド 専務取締役 奥寺弘務さん
取材:ライズ北海道 山本、亀山
〔株式会社グラッド商品開発者の奥寺さん〕
―先ずは御社の事業についてお聞かせください。
マーケティング事業を軸にしていて、室蘭市のショッピングモール「モルエ中島」のプロモーション関係に携わっています。また、毎月第二第四土曜日に開催される室蘭地域の交流と発信のイベント「モ中」をプロデュースしていて、さまざまなゲストを呼び、モルエ中島から「まちづくり」「人づくり」を行っています。
また北海道の新鮮な農作物や海産物加工品を取り扱うECサイト「北海道旬直」も運営しています。
―ECサイトも運営されているんですね。
そうですね。北海道の安全な食だけを届けたいという思いから「北海道旬直」を開設して、安全が確認できた農産品・海産物・ジビエを販売しています。
〔商品開発について熱く語る奥寺さん〕
―全にこだわった商品販売という姿勢、素晴らしい限りです。ところで御社は商品開発とは無縁だったと思うのですが、何がきっかけになったのですか?
もともと道が主催する「地域フード塾」に参加していて、そこで長谷製菓さんと知り合いました。その後、コラボしましょうという流れになって、2022年度の「ソイビーツ」の開発に至りました
「ソイビーツ」は働く女性をターゲットに、スーパーフードと呼ばれる「ビーツ」とタンパク質が豊富とされている「ゆきぴりかのきな粉」を使用して作ったクッキーです。
―タンパク質を気軽に摂取できるクッキーなんですね。
そうですね。仕事中など、小腹が空いたらデスクから出して気軽に食べられるようにチャック付きパウチに入れました。甘さ控えめの味にして食べやすくしています。
〔エゾリッチ4種類のパッケージ〕
―罪悪感なしにつまめるおやつですね。そして2年連続で商品開発をされています。
はい。2023年度はドックフードの「エゾリッチ」を開発しました。
―健康食品からドックフードにと、大きく舵を切りましたね。
ウチの愛犬が加齢とともに噛む力が弱くなってしまったので、エゾシカ肉をペーストにして与えてみてはどうか?と思ったことがきっかけでした。自宅で試してみたところ、非常に食いつきが良くて、美味しそうに食べてもらえたことで、開発してみようかと考えるに至りました。
―愛犬からのアイデアだったんですね。ちなみにワンちゃんのお名前は?
ちくわちゃんです(笑)
十数年くらい前の同時期、ペットブームで飼い始められた多くの子たちが今、丁度ちくわと同じように高齢犬になっているので、皆困っているのではないかと考えました。結果、無添加・無着色という商品の開発に至りました。
―エゾシカ肉に着目した理由を聞かせてください。
鹿肉は栄養素が多く含まれていて、高タンパク質・低脂質・低カロリーでワンちゃんの健康づくりに欠かせないお肉なんです。
また、エゾシカは農業被害を生む害獣とされていて、猟師の方々が日々駆除をされています。しかし、駆除はするもののそのまま放置していく猟師の方もいて、そうするとヒグマが近寄ってくる可能性もあるので、積極的に鹿肉を消費したいということも一つの理由です
―社会貢献活動にも繋がっているんですね。
そうですね。道内各地の猟師の方々とは独自のパイプで繋がっているので、積極的に鹿肉を活用するようにしています。鹿肉の新商品も検討したいと思っています。
〔インタビュー風景〕
―商品開発での思い出はありますか?
今回、エゾリッチの開発を行う上でペット関連商品の取り扱いが初めてでしたので、ワンちゃん向け食品としての適不適について検討したり、通年で利用できる野菜のラインナップを考えたりと大変でした。また、ほぼ毎日獣医師さんのところに通って話を聞きながらという商品開発になりました。
―すごい行動力ですね。
いえいえ(笑)
それで原料に関しては、ノーステック財団さん主催のビジネスEXPOで金丸農園(栗山町)さんとお会いして、小松菜がほぼ通年出せるとのお話をいただけたので、その安心安全な野菜をエゾリッチで使用させてもらうことになりました。
―人との繋がりで商品が開発されているんですね。
そうですね。ソイビーツの開発の時にお世話になった長谷製菓さん、安全な野菜を提供して下さるけんぶちVIVAマルシェさんや金丸農園さん、鹿肉を提供して下さる猟師の方々も含めて、とても有り難いことに色々な方々との出会いと繋がりによって商品が開発できています。
―奥寺さんのお人柄あってこそですね。
〔JPC受賞の楯〕
―商品も高い評価を受けていますね。
「エゾリッチ」は2024年ジャパン・パッケージング・コンペティションの経済産業省商務情報政策局長賞を受賞したんです。
―(受賞企業を拝見)受賞者として大手企業がズラリと並ぶ中、凄い快挙ですね!
ありがとうございます。一目で“鹿”とわかるようなパッケージにしたくて、担当の方と試行錯誤を繰り返して作りました。
コンペティションに申請はしたものの、まさか受賞できるとは思ってなかったので嬉しかったですね
―見た目からもわかりやすいパッケージなので受賞も納得です。おめでとうございます!
〔JPCの表彰状とエゾリッチ〕
―ノーステック財団の支援についてお聞かせください。
ドックフードに関してはまったくの素人だったので、商品開発にあたっては色々と調べてくださったり、財団内でワンちゃんを飼っている方に試食をしていただいたり等々、様々な形でサポートをしていただきました。
また財団さんとの繋がりで酪農学園大学(江別市)の方々にもご協力をいただき、製造方法や賞味期限の問題など、様々な面でご協力をいただきました。とにかく一切わからないところからのスタートだったので、本当丁寧に教えていただいて感謝しています。
〔販売カーの前での一枚〕
―最後に北海道の食の今後についてはどの様にお考えでしょうか?
気候の変動によって、北海道でも暑い日が続くようになり、一次産品の生産に変化が生じています。生産者の方々も今までのやり方とは違うやり方を試行錯誤している中、我々も環境に合わせた作り方や販売方法を考えていく必要があると思っています。北海道の食に関して大きく見直しが必要となる時期が来ているので、商品開発もそうですが、「北海道旬直」での販売を通じて、生産者の方々の支援もしていけたらと考えてます。
―共にECサイトで北海道の食を支えていきたいですね。本日は素晴らしいお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。
「命をいただいて、生命をつなげていく」
自然界のバランスを崩さぬために失われていく鹿の命。
その命を活かすことによって、エゾリッチが開発され、別の命を守ることに繋がっています。
農業や漁業も含めて、我々は命をいただいて、自らの生命を繋いでいます。
我々にとって、大切なものである“自然”を愛し、守り、維持していくことが、その自然に対しての感謝の形ではないでしょうか。
奥寺さんの想いは、多くのペット犬の生命を守り、つなげていくことになるでしょう。
この素晴らしい開発商品を少しでも広く皆さんに知っていただける様、ライズ北海道としても可能な限りご協力していければと思っております
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
(ライティング・編集:山本純己、亀山将人)
企業情報
◆企業名|株式会社グラッド
◆住所|北海道札幌市北区新川2条4丁目7-25
◆電話番号|011-214 -1742