石狩鍋の100年の歴史を今へ繋げる~石狩市・石狩シェアハピシティ計画~|HFT21

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石狩シャケナベイベーの調理画像
2024-09-26

 

今期の取材も今回が最後となりました。全道を巡って様々なメーカーさんのお話を伺えたことで、筆者にとっても良い刺激となり、良い経験を得ることができました。関係者の皆様には心より感謝申し上げます。


さて、今回お伺いしたのは石狩管内を拠点とした地域づくり活動を行っている“一般社団法人石狩シェアハピシティ計画”さんです。


石狩市といえば北海道を代表する郷土料理「石狩鍋」で有名ですが、同社のプロジェクトの1つとして、その石狩鍋をフックに関係人口を創出する取組を2021年頃から展開しています。


石狩地域は江戸時代から鮭漁が盛んに行われていたそうで、鮭漁の合間に漁師たちが獲れたての鮭のぶつ切りやアラにキャベツや玉ねぎなどを味噌仕立てにして賄い飯として食べていたのが由来とされています。


そんな北海道開拓初期から続く伝統料理を未来へと繋げる活動をされている石狩シェアハピシティ計画の河田さんに今回の商品開発についてお話を伺ってきました。どうぞご覧ください。


 

石狩鍋の100年の歴史を今へ繋げる~石狩市・石狩シェアハピシティ計画~|HFT21

(一社)石狩シェアハピシティ計画:事務局長 河田 寛史さま
ライズ北海道(取材):山本、亀山

石狩シェアハピネス計画の理事事務局長の河田さん 〔石狩シェアハピシティ計画の事務局長の河田さん〕

 

―本日はよろしくお願いいたします。先ずは“石狩シェアハピシティ計画”がどのような活動をされている団体なのか教えていただいてもよろしいでしょうか。


河田さん:2018年に石狩地域への移住者の有志が中心となり結成した“地域づくり団体”で、移住者の視点から地域のリブランディングを始めとした地域づくり活動を展開しています。その中で関係人口づくりをやり始めた時に、どこでもやっていることをやってもしょうがないという話になって、“石狩”といえば“鍋”は知られているので“石狩鍋”を切り口に関係人口づくりをやっていこうとなったんです。


※関係人口:移住した「定住人口」でもなく、観光に来た「交流人口」でもない、地域と多様に関わる人々を指す言葉。


 

―「石狩鍋」は北海道の郷土料理として認知度は抜群ですからね。


河田さん:そうですね。ただ郷土料理として有名ではあっても、じゃあ石狩鍋を食べに行くぞ!とはならないんですよね。自分自身も正直まったく食べてなかったので(笑)。そういう中で商品として手を伸ばしやすくする為に現代風にアレンジをして食べてもらう機会を増やして、そこを入口に本当の石狩鍋に興味を持って食べてもらいたい、石狩という地域を知ってもらいたいと思っています。


 

―石狩に住んでいても石狩鍋を食べる機会は少ないんですね。


河田さん:そうなんですよ。僕らの時代だと子供の頃に夕飯とかで食べた記憶があるんですけど、今の子供達ってほとんど食べてなくて、食べたといっても給食くらいで、自宅で食べることはほとんどないんですよね。今の若い世代の食べる機会が減ってくると本当に石狩鍋の存在が薄れて消えていくんじゃないかと、どうにかしなければと思っています。


 

三笠高校調理部の皆さん 〔三笠高校調理部の皆さん〕

 

―そんな中で“アレンジ石狩鍋”を開発しようとなったんですね。


河田さん:そうですね。先ず若い子達に食べてもらいたくて、若い感性や味覚を持った人に協力してもらおうということで、三笠高校調理部の生徒さんに協力をお願いしました。


 

―どのようにして三笠高校の協力をもらえたんですか?


河田さん:もともと三笠高校調理部の顧問の先生と仲良くしていたこともあって、協力してもらえるようにお願いをしたんです。結果、快諾してもらえました(笑)


 

―河田さんの人脈あっての協力だったんですね。


河田さん:三笠高校に協力してもらえることが決まったので、先ずは実際に石狩鍋を食べてもらうことにしたんです。石狩市内に「金大亭」という石狩鍋発祥の有名なお店があるんですけど、そこに生徒さん10人位を連れて来てもらって、実際に石狩鍋を食べてもらい女将から石狩鍋のルーツやお店のこだわりなどをレクチャーしてもらいました。


 

―実際に発祥の店の味を感じてもらったことで生徒さんの中でイメージが湧きそうですね!


               

河田さん:やはり我々にはないアイデアがあって、生徒さん達には2年間かけて計4つのレシピを作ってもらいました。それぞれのレシピは社団のホームページに掲載したり、“鍋ビレッジ”というコミュニティを作ってレシピの発信をしたりしています。ちなみに商品化については鍋ビレッジの参加者の発言をキッカケにやることになったんです。


 

石狩の金大亭の外観 〔石狩鍋発祥の店「金大亭」の外観〕

 

―商品化はコミュニティの参加者からの声がキッカケだったんですね。商品化にあたっては奥田政行シェフからもアドバイスをいただいたとの事ですが、どういった経緯でお願いをされたんですか?


河田さん:実は石狩に2~3回程来ていただいてイベントに参加して下さっていたんですよね。その繋がりもあって、奥田シェフには監修として商品化プロジェクトに加わっていただけました。三笠高校の生徒さんが開発する商品を奥田シェフにチェックしてもらって、レシピの試行錯誤を繰り返した結果、この商品ができました。


 

―なるほどですね。奥田シェフは自分のお店だったり様々なイベント等でお忙しいと思いますが、北海道に来てもらってアドバイスをいただいたりしているんですね。


河田さん:シェフもお忙しいので、我々だけの為に北海道へ来ていただくことも難しくて(笑)。北海道で他の用事がある際などにお願いしています。


 

―「アレンジ石狩鍋 石狩シャケナベイベー」を開発するにあたり、河田さんの中で商品へのこだわりや想いはありますか?


河田さん:味に関してはプロではないので細かいところはお任せしましたが、石狩市の材料を使いたいということで「石狩みのりファーム」さんのミニトマトを使わせていただきました。石狩みのりファームさんは2021年に新規就農した農家さんで、Uターン組なのでもともと我々団体との繋がりもありましたし、6次化に対しても凄く積極的な農家さんだったこともありB品の提供をお願いしました。


 

調理中の奥田シェフ 〔調理中の奥田シェフ〕

 

―開発するにあたって苦労されたことなどはありましたか?


河田さん:去年商品化に向けて動き出して、当初はテスト販売という形で600gのサイズで作ったんですが、もともとこの商品自体が5倍濃縮になっているので600gだと3リットルのスープができてしまうんです。これは鍋にすると3~4回分の量になります。試食してもらった方々からは「味は美味しいんだけど量が多い」という声が非常に多かったですね。


 

―そうなんですね。600gという量にこだわりがあったんですか?


河田さん:製造の効率が一番良かったのが600gだっただけで、特段その量にこだわりは無かったです。なのでテスト販売後に改良をして、最終的に容量を300gに変更しました。


 

―改良についてはノーステック財団の支援後に行ったとお伺いしましたが。


河田さん:そうですね。発売する前に改良をしようということで、ノーステック財団さんの支援後にクラウドファンディングで協力をもらって改良に向けた資金調達をさせていただきました。お陰様で目標額を達成して、先週ようやくリターン品の発送も終わりましたので、一般販売に向けて動けるようになりました。


 

石狩シャケナベイベーのパッケージ 〔石狩シャケナベイベーのパッケージ〕

 

―ノーステック財団に支援を申請した経緯は?


河田さん:2022年度に石狩みのりファームさんが開発支援を受けていたこともあり、支援プログラムについては知っていました。なので我々も商品化に向けて動こうと思った際、石狩みのりファームさんからアドバイスを頂きノーステック財団さんのプログラムに申し込みをしました。


 

―なるほどですね。石狩みのりファームさんが支援を受けていたのをご存じだったんですね。ノーステック財団からはどのような支援を受けましたか?


河田さん:テスト販売に向けた製造の費用や、ミニトマトの一次加工費用だったり、全面的に補助金を活用させていただきました。その他にも販路を紹介してもらったり、展示会への出展機会もいただいたりと様々なサポートをしていただきました。


 

石狩シェアハピネス計画のメンバーの皆さん 〔石狩シェアハピシティ計画のメンバーの皆さん〕

 

―最後に北海道の食の未来についてはどのようにお考えですか?


河田さん:やっぱり素材は一級品だと思うので、その強みを生かした物を作り続けるということが大事だと思います。北海道は歴史の浅い地域だと思うんですけど、その中でもこれまで培ってきた歴史や風土みたいなものは凝縮されていると思うので、先人達の作り上げたものを次世代にしっかり伝承していきたいなと思っています。僕らも石狩鍋のスープを作っていますけど、時代に合わせたアレンジは必要だと思います。石狩鍋は今年の3月に「100年フード」という文化庁が認定する料理に選ばれました。そんな歴史ある料理を未来に残す為にも、現代に合わせたアレンジをして興味を持ってもらえるように活動を続けていきたいと思っています。そういった想いが北海道の未来をつくると考えています。


 

―本日はお時間をいただきありがとうございました。


 

石狩シェアハピネス計画の河田さん、石狩シャケナベイベーを持っての一枚 〔河田さん。石狩シャケナベイベーを持っての一枚〕

 
 

取材を終えた後、私は柔道創始者である嘉納治五郎の名言を思い出しました。


 

『伝統とは形を継承することを言わず、その魂を、その精神を継承することを言う』


 

従来の“石狩鍋”をアレンジし、若い世代にも受け入れられる味を創り、それを広めていくという活動は“形”だけの継承では無く、いつの時代でも石狩鍋が愛される様、それを守り伝えていく精神を引き継ぐための活動だと感じました。


あらゆるものが急速に変化していく現代社会において、ただただ今までの味やレシピを守っていくだけでは、何れ廃れて忘れられてしまう可能性も否めません。


河田さんのお話を聞いて“石狩鍋”とは、決まった素材やレシピで作られる一料理では無く、石狩地域に暮らす人々の魂なのではないかと思った次第です。


時代の変化に対応しながらも、伝統を継承していくという“石狩シェアハピシティ計画”の取り組みは、その名の通り“幸せを分け合う”大切な活動だと思います。


ライズ北海道はこれからも同社の取り組みを応援します。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。


 

(ライティング:亀山将人・編集:山本純己、亀山将人)

 

企業情報

◆企業名|一般社団法人 石狩シェアハピシティ計画
◆住所|北海道石狩市花川北1条4丁目150番地
◆電話番号|080-1887-7447