「牛乳を飲んで欲しい」酪農の町から届ける想いのカタチ~別海町・コウシ茶寮~|HFT21

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コウシ茶寮 田中さんの画像
2024-09-26

 

取材も今回で5回目になりました。


今回は酪農の町として有名な別海町にありますコウシ茶寮さんへお伺いしてきました。


酪農の町というだけあって町の周辺は酪農場が広がっており、いたるところに乳牛が放牧されていました。そんな酪農業が盛んな別海町の人口は13,995人ですが、牛の数は人口の約8倍の113,711頭もいます。さすが酪農の町ですね。人より牛の方が多いだけに道路には「牛横断注意」という看板もありました。北海道らしい標識ですが札幌に住む筆者からしても見たことない標識だったので驚きました。


さて話は戻りますが今回お伺いしたコウシ茶寮さんの代表の田中さんも元酪農家だったようで、いまはカフェの経営をしておりますが酪農に対する想いをいまでもお持ちで今回の商品にもその想いが込められておりました。みなさんに記事を読んでいただき興味を持ってもらえると嬉しいです。


 

「牛乳を飲んで欲しい」酪農の町から届ける想いのカタチ~別海町・コウシ茶寮~|HFT21

コウシ茶寮 代表 田中友紀子さま
取材:ライズ北海道 吉本、亀山


〔丁寧に取材に答えて下さる田中さん〕


  

 

―本日はよろしくお願いいたします。さっそくですがコウシ茶寮を立ち上げるまでの経緯からお伺いしてもよろしいでしょうか?

  

田中さん:もともと出身は中標津町なんですけど、進学するにあたり札幌に出て少しだけ就職もしたんですけど、若いうちにこっちの方に戻って別海町の酪農家に嫁いだんです。

 

  

―そうなんですね。酪農家に嫁いだ事で酪農について色々考えるようになってお店をオープンしようと思ったんですか?

  

田中さん:そうですね。20代で結婚をしましたけど、酪農だけじゃなくて色々やりたいと思っていたので、最初はハンドメイド作品とか、自分で仕入れたものとか、そういうのを売ったりするイベントをやったり、そのうち小さいカフェも作って飲食提供したりするようになりましたね。

 

  

―そういうイベントや小さいカフェがコウシ茶寮のベースになっているんですね。

  

田中さん:年2回くらいの開催だったんですけど、コロナ禍になってしまい開催できなくなって、それで考える時間もすごく増えたんで、いずれやりたかったカフェ経営を商売としてできるように考えたんですよね。それで色々考えてコウシ茶寮を2021年11月にオープンしました。

 

  

―コウシ茶寮と酪農のお仕事は両立されているんですか?

  

田中さん:オープン当初は両立していましたが、酪農は一昨年の12月に畳んだんですよね。後継者もいないですし、夫婦も若いと言っても40歳後半なので辞めることにしました。

 

  

―酪農を辞めはしましたが、いまも酪農に対する想いはありますか?

  

田中さん:酪農家からカフェ経営者に立場は変わりましたけど別海町の乳製品を発信して消費拡大できればいいなという想いは持っています。

 

  

―質問が変わってしまうのですがコウシ茶寮のロゴが凄く気になったんですが、どういった意味が込められているんですか?

  

田中さん:これは別海町で漁師と兼業でデザイナーをやっている方がいてその方に描いてもらったんです。ざっくりとしたイメージは私と当時高校生だった娘と一緒に考えたんですが、デザイナーさんがコウシ茶寮のコウシ(=子牛)にちなんで牧草を食べる子牛をイメージして描いて下さったんです。黒いラインが牛を表現していて緑のラインが牧草を表現しているんです。

 

  

―そうなんですね!こんなに良いデザインができて娘さんとの思い出にもなりましたね。

  

田中さん:デザインが届いたときは、デザインが良すぎて娘と二人で叫んじゃいました(笑)

 


〔コウシ茶寮のロゴ〕


 

―今回ノーステック財団の支援で1個入りの「北海道おてつめ最中(カフェオレあん)」を開発されましたけど、まず「北海道おてつめ最中(カフェオレあん)」を最初に開発しようと思ったキッカケはありますか?


田中さん:カフェのイートインだけでは厳しいという思いがあって、テイクアウトできるものだったりお土産品になるものを開発しようと思ったんです。お土産品って考えたときに、別海町だと乳製品やホタテとかが有名ですけど冷蔵や冷凍になってしますので、常温で持ち運びができて賞味期限が長い物を作りたいと考えたんですよね。


 

―常温品はいいですよね!それでお菓子にしようと思ったんですか?


田中さん:そうですね。コウシ茶寮のコンセプトも和を意識したところもあったので和菓子にしようかなと思ったんですけど、中でも餡子と乳製品って結構相性が良いじゃないですか、それでその組合せで何かできないかなと思った時に最中にしようと思ったんです。


 

―なるほどお店のコンセプトがヒントになった商品なんですね。


田中さん:最中といっても皮で餡を挟んだ状態で販売してしまうと賞味期限が短くなってしまうので、皮と餡をセパレートにして自分で餡を挟んで食べるようにしたりお土産品として買いやすいように考えて開発しましたね。


 

―取材前に近くの伊藤牧場さんに寄ったんですけど、お土産コーナーにおてつめ最中が売っていたので買っちゃいました(笑)1個入のサイズ感がちょうど良くて買いやすいですよね。


田中さん:ありがとうございます。カフェ経営をするにあたって伊藤牧場さんにはお世話になって、修行もさせていただいていたんですよね。その繋がりで商品も置いていただいているんです。


 


〔伊藤牧場で販売していた北海道おてつめもなか〕


 

―ノーステック財団の支援もあって1個入りの開発をすることになったと思うんですけど、1個入りはなぜ開発されたんですか?


田中さん:お客さんからの要望が多くて、5個入りだと餡がまとめてパックに入ってしまっているので、分けて配ることができないんですよね。試しに食べてみたい人もいるだろうし、誰かにちょっとしたプレゼントとして渡したい人もいると思うので、お客さんの声で1個入りを作ることにしました。


 

―なるほどですね。ノーステック財団には1個入り用商品の開発ってことで申請されたんですね。


田中さん:実は最初は商品の改良も目的としてあったんです。申請もそれがメインだったんです。


 

―いまの商品でも十分美味しいのに、何を改良しようとしたんですか?


田中さん:私の悩みにはなるんですけど、実は餡には別海町産の牛乳が半分近く入っているんです。ですがミルク感がないっていうことが私の中の課題としてずっと抱いていました。それでノーステック財団さんの支援を活用して改良することにしたんです。


 

―別海町の牛乳を使っているからにはミルク感を出したい、別海町の乳製品を発信する田中さんとしてはどうしても改良したかったんですね。


田中さん:そうなんです。そうなんですけど、なかなか試作を重ねても美味しくできなくて、ノーステック財団さんのサポートで市場調査やアンケートとかも取らせてもらったんですけど、カフェオレ味が凄い人気なんですよね。コーヒーの苦味もあってバランスの良い味で、地元のお客さんからも変えないで欲しいっていう声もあったんです。


 

―田中さんの想いとは裏腹にお客さんはカフェオレ味に満足されていたんですね。


田中さん:それで途中で計画を変更してカフェオレあんは残してミルク感の強い商品を別で作ろうってなったんです。ただ、やはり難しいことに変わりはなく全然納得するものができないんです。


 

―ミルク感を出すために牛乳の割合を増やすのが難しかったり、味を出すのが難しかったりするんですか?


田中さん:乳製品が原料の半分を越してしまうと乳製品扱いにあってしまうんですよね。なのでこれ以上牛乳の割合を増やすことが生産工場ができないんですよ。そうなるとコーヒーの量を減らしたり香料を入れたりするんですが、どうしてもナチュラルな味にならないんですよね。


 


〔商品開発の思い出を語る田中さん〕


 

―商品の改良にかなり苦労されてますね。商品の改良は上手くいったんですか?


田中さん:方向転換をして「いちごミルク餡」にすることにしました。いまも開発をしている途中ですけど、カフェオレとは別の系統になるので新たな味の選択肢としては良いなと思っています。


 

―いちごミルク餡の開発はノーステック財団の支援を受けて行っているんですか?


田中さん:この開発は独自に行っていることで、ノーステック財団さんの支援については最終的に1個用パッケージの開発がメインになってしまいました。


 

―なるほどですね。ノーステック財団の支援を受けて開発したパッケージについてお話を伺ってもよろしいですか?


田中さん:開発経緯は先ほども話た通りですが、パッケージのデザインについては知り合いのデザイナーさんにお願いして考えました。1個用で手に取りやすく持って帰りやすいサイズにしたいということで、今の形状とサイズ感になりました。


 

―気のせいかもしれませんがパッケージの形が牛舎に似ているように思うんですが・・・


田中さん:その通りで牛舎の形状を意識したパッケージになってます。ただ最初からそういった要望を伝えていた訳ではないんです。たまたまデザイナーさんから提出されたパッケージサンプルで、最中の皮と餡が収まる形状が何となく牛舎の形状に似ていたんです。それをデザイナーさんに伝えたら形を近づけて下さっていまの形になったんです。


 

―気のせいではなかったですね(笑)その他にパッケージでこだわったところはありますか?


田中さん:パッケージの紙も北海道由来の紙を使おうと思って、エゾマツクラフトっていうエゾマツの端材を粉砕して古紙に抄き込んだ紙を使っています。


 

―北海道在来種のエゾマツを使った再生紙なんですね。古紙とエゾマツの端材を使っているので環境に良い紙ですね。


田中さん:そうですね。環境にも良いですし紙自体も凄いお洒落で色もカフェオレにマッチしているので、良いパッケージができたなと思っています。


 


〔牛舎をイメージしたパッケージと子牛をイメージした皮〕

 

―ノーステック財団からの補助金で改良やパッケージ開発をされてましたが、その他にどのような支援を受けたりしましたか?


田中さん:勉強会を定期的に開催していただいており、この間は食品表示の勉強会があって私自身の新たな知識を得る場を提供いただいてます。それと、ノーステック財団さんには販売する機会を提供していただいており、ビジネスエキスポもそうですし10月にも販売イベントに出店させていただくことになっています。


 

―なかなか自分で販売会に参加することが難しかったりするので、そういった機会をいただけるのは有難いですよね。


田中さん:補助金をいただくだけじゃなくて、色々なサポート支援をしていただけていて感謝しています。


 

―最後の質問になりますが、北海道の食の今後についてどう考えているかお伺いしてもよろしいでしょうか?


田中さん:やっぱり酪農の情勢が気になってしまうんですよね。昨今、給食で牛乳が使われなくなったり、コロナ禍で消費が低迷したりして結構打撃があったりして、原料も石油が上がったり何もかも資材が上がっていて厳しいじゃないですか。そういうことがあるので酪農業界に明るい未来が来るようにしたいなと思ってます。


 

―我々がもっと牛乳を消費していかないと行けないですね!


田中さん:酪農業界としは牛乳を飲んで欲しいっていうのもそうですし、そもそもそういった機会が失われてきているんで、私として支援や発信をしていかないといけないと思っています。


 

―酪農業界に明るい未来が来るように我々も情報発信のお手伝いをさせていただきます。本日はお時間をいただきありがとうございました。


 


〔コウシ茶寮の店舗入口〕

 

取材を終えた後、私はアメリア・イアハートの名言を思い出しました。

 

「最も難しいのは、行動しようと決断することです。」

 

いま酪農業界では「飼料価格の高騰」や「牛乳の消費減少」などにより厳しい状況に直面しています。そんな中で田中さんも厳しい状況に直面し酪農から退くという決断をされました。

 

それでも田中さんの中には酪農に対する「想い」が宿り続け、その「想い」を形にしようと創り上げたのが「コウシ茶寮」なのではないかと感じています。

 

そんなコウシ茶寮が開発した商品は酪農を想い考えられたこだわり商品となっております。

 

これからも田中さんは酪農を想い続け、その想いを商品という形にして届けていくと思います。

 

そんなコウシ茶寮さんをライズ北海道はこれからも応援してまいります。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

(ライティング・編集:亀山将人)

 

企業情報

◆企業名|コウシ茶寮
◆住所|別海町別海旭町36番地 ステージハウス別海B1F
◆電話番号|0153-74-8750